会計士の気まぐれ日記

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ポケモンGoによる任天堂の業績影響

今年7月にリリースされ、今や社会現象と化した「ポケモンGo」。

今回は、このポケモンGo任天堂株式会社の業績にどのようなインパクトを与えるのかを分析していきたいと思います。

 

 

まず、ポケモンGoはアメリカで先行リリースされ、その後日本でリリースされました。

その熱狂ぶりは既に周知の通りで、正確な売上高はわかりませんが、アメリカの調査会社によると、8月の時点で全世界での売上高は200億円を超えているとのことだそうです。

ポケモンGo Plus」とかがまたリリースされることを考慮すれば、任天堂の第2四半期である9月30日までにその売上高は300億円は超えるだろうと考えられます。

では、これがどの程度任天堂の業績に影響を与えるのでしょうか?

それを考えるにあたっては、ポケモンGoの開発に携わっているいくつかの会社の関係を明らかにする必要があります。

 

 

ご存知の方もおられるかとは思いますが、ポケモンGo任天堂が作っているわけではありません。

アメリカの非公開会社(ざっくり言えば、上場していない会社。正確には違うが)であるNiantic(ナイアンティック)という会社が、

任天堂株式会社

株式会社ポケモン

③Alphabet Co.(Google持株会社

の出資を受けて、開発を行ってポケモンGoが誕生したのです。

 

ウォールストリートジャーナルが掲載している図を引用すると、以下のような関係図になっています。

 

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ここで重要なのが、3社がどれくらいの割合で出資をしているかということ。

それを探るために、ナイアンティックのAnnual Reportを見に行こうと思ったのですが、残念ながらこれを見るためには199ドルを支払わなければならないっぽかったので断念しました。笑

 

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ただ、任天堂がこのナイアンティックに対して持分法を適用している可能性があることが、任天堂が公表している有価証券報告書を見ればわかります。

 

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上のデータは、2016年3月期の任天堂有価証券報告書ですが、「持分法による投資利益」が前年から2倍ほどに増えていますよね。

ということは、任天堂の関連会社が今回いい業績パフォーマンスを見せたということ。

任天堂有価証券報告書には、関連会社が3つ公表されていますが、その中でも株式会社ポケモンが規模的にも多くを占めているため、株式会社ポケモンの業績が良かったのかとなります。

しかし、株式会社ポケモンも決算書を公表していないため、仕方なく官報により調べると、

 

2015年2月期 当期純利益:20.39億円

2016年2月期 当期純利益:6.19億円

 

 

あれ?

株式会社ポケモンの業績は落ちています。

しかも、先ほどの任天堂有価証券報告書上は、2016年3月期の持分法による投資利益が18.8億円だった。。

任天堂は、株式会社ポケモンの32%を保有しているので、株式会社ポケモンの純利益から自社への配当を除いた金額の32%がこの持分法による投資利益になる。

ということは、株式会社ポケモン以外に任天堂の業績インパクトが大きい会社が存在しない限り、18.8億円の持分法による投資利益はでてこないということになります。

 

 

そこで、任天堂有価証券報告書の「関係会社の状況」を見てみましょう。

 

 

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これを見ると、公表している他の2社は、規模的にもそこまで大きな業績インパクトを与えそうにはありませんよね。

ここで注目してほしいのが、ここの注書き。

 

「上記の他、持分法適用関連会社が1社あります。」

 

おそらく、この1社がナイアンティックなのでしょう。

日本の会計基準では、原則的に株式保有割合が20%以上50%未満の会社について持分法を持分法を適用しなければならないとされています。

つまり、任天堂は少なくとも20%以上は、ナイアンティックに出資をしている、ということです。

そうすると、推定で株式会社ポケモンが約30%、任天堂が約20%ほどの出資をナイアンティックに行っていると考えられます(これはマジで推定なので、実際と大いに乖離している可能性がありますが)。

 

 

そして、先ほども述べたように、任天堂の第2四半期末までに300億円のアプリ収益があがったとしましょう。

そのうち3割はAppleGoogleに持って行かれ、また人件費や開発費ももちろんかかるので、かなり多く見積もっても最終的な利益は40%の120億円。

この120億円を、約30%出資している株式会社ポケモン、約20%出資している任天堂、その他の出資者に分配します。

 

 

株式会社ポケモンへの利益インパクトが36億円、そのうち32%出資の任天堂への利益インパクトが、11.5億円

②これと別に、任天堂も直接ナイアンティックに20%出資しているので、24億円が任天堂への利益インパクトに。

 

 

しめて、誤差を考慮して約35億円〜50億円ほどが、任天堂の業績へ与えるインパクトだと想定されます。

2016年3月期の任天堂当期純利益が165億円、その前期の当期純利益が418億円なので、たしかにあの熱狂ぶりとは裏腹に、任天堂の業績にはそこまででかいインパクトを与えない可能性が高いです。

既に任天堂が「連結業績に与える影響は少ない」と発表しているのもうなずけます。

そして、直近の任天堂の株価チャートが下のとおり。

 

 

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これを見ると、リリース時に1回急騰して、そこから少し落ちて今は横ばいって感じですよね。

任天堂が既に業績インパクトが大きくないとは言っているものの、中には次の四半期の好業績を期待して買いポジションを保有している投資家もいるはず。

このような人たちがいるなかで本当に利益が前年同期と同じ、もしくはそれ以下というパフォーマンスに終わった場合には、株価は少し落ちるでしょうね。

 

 

 

と、ここまで長々と説明してきたのですが、あくまで今日の記事は僕が独自に1時間くらい調べて書いている内容なので、実際の結果と大幅に乖離する可能性があります。

なので、この記事を投資意思決定材料に使うのはおすすめしないことをお断りさせていただきます。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。