ストックオプションのメリットとデメリット
東京証券取引所から、メルカリの東証マザーズへの上場が承認されました。
上場予定日は6月19日。
長らく日本唯一のユニコーン企業と言われてきたメルカリの上場は大きな話題を呼びました。
そしてその中でも話題の一つとして取り上げられたのが、「全社員にストックオプションを付与している」ということ。
上場前のベンチャー企業に限らず、すでに上場している大企業においても、インセンティブのひとつとして利用されるこのストックオプション。
「ストックオプションをもらって一攫千金を狙いたいからベンチャー企業へ就職するぜ!!」みたいな学生も増えているほどに浸透してきていますが、実際具体的にどのようないメリットがあるのか。また、逆にデメリットはないのかについて、今日は書いてみたいと思います。
「オプション」とは
ストックオプションの話に入る前に金融商品の中に、ストックオプションの元となっている「オプション」というものについて簡単に説明しておきます。
「オプション」とは、定義は色々ありますが、
「ある原資産を、将来の特定時点に特定の価格(行使価格)で買うまたは売る権利」
のことを言います。
例えば、現時点の価格が100円の資産Xがあったとしましょう。Aさんは、この資産が来年150円になることを見込んでいます。
でも、値下がりによる損失を被りたくないと考えています。
そんなときに使えるのがオプションです。
「資産Xが、1年後に150円になったときに、100円で買うことができるし、もし150円に届かなかったらその権利を放棄することもできる。」
つまり、損失を負うリスクを避けながら、利益獲得を狙うことができるのです。
実際にはこのオプション自体の価格が決まっており、オプションの購入額だけコスト負担が必要ですが、損失がオプション料に限定されていることが魅力の金融商品として知られています。
権利行使するか、権利放棄するかを選択することができるので、「オプション」と言われているのですね。
大前提として、オプション取引によって実際に利益を得るまでに以下の3段階を経るということを押さえておいてください。
①オプション取得
↓
②権利行使により、原資産取得
↓
③原資産の譲渡
「オプション取得時にカネを払う必要がなく」、「原資産が株式である」場合のオプション取引のことを指します。
ちなみに、原資産は株式だけど、オプション取得時にカネを払う必要があるものが、新株予約権です。
ストックオプションの種類
ストックオプションには、大きく分けて以下の2種類が存在します。
①通常型のストックオプション
②株式報酬型のストックオプション
まず、①通常のストックオプションですが、こちらはあらかじめ決められた権利行使価格で株式を取得することができ、権利行使時の株価が権利行使価格よりも高ければ高いほど、利益を得ることができるものですね。
ひと昔前までは、ストックオプションといえば、この通常型のストックオプションでした。
しかし、近年増えてきているのが、「株式報酬型」のストックオプションです。
これは、「権利行使価格が1円のストックオプション」のことを指します。
だから、株式報酬型のストックオプションを付与するということは、実質的に会社から社員へ株式をプレゼントしますよーってみたいなものです。
いずれのストックオプションについても、自社の株価が上昇すればするほど得られる利益が大きくなることについては共通しています。
ストックオプションのメリット
ストックオプションのメリットとしてまず挙げられるのが、なんといっても「社員のモチベーションを高めることができる」ということです。
例えば先ほどの例を用いると、権利行使価格が100円のストックオプションを付与されて、将来株価が150円まで上がって権利行使をしてすぐに譲渡をすれば、50円の利益を得ることができます。
でも、株価が150円になるためには、それだけ社員である自分たちが仕事を頑張って会社の価値を高めなければいけませんよね。
結局株価が行使価格よりも低くなってしまえば社員は利益を得ることができない(または減ってしまう)ので、株価が上がるように必死に頑張ります。
この、社員一人ひとりに経営の当事者意識を植えつけて、モチベーションを高めることができるというのが、一番の利点です。
上場前のベンチャー企業でストックオプションを付与されたりしたら、上場するためにめちゃくちゃ必死に頑張りますよね。
また、このインセンティブを与えることができるというメリットから波及して、「社員に対する給料の支払負担を抑制することができる」といったことや、「社員を長く会社に在籍させることができる」といったメリットもあります。
ストックオプションは基本的に給料のように実際のキャッシュアウトを伴うものではないため、資金繰りに余裕があまりないから高額な給料を払うことはできないけど、優秀な人材を獲得したい!っていう創業初期の会社にはもってこいの制度です。
しかも、権利行使の要件に、「○年以上の在籍」等を追加することで、社員がその会社に一定期間とどまるインセンティブを与えることもできます。
優秀な人材を会社に長く在籍してもらうことは、どこの会社も最重要事項としてあてはまるでしょう。
そんな重要事項を解決する手段のひとつとして機能するのが、ストックオプションのいいところです。
ストックオプションのデメリット
では、今度は逆にデメリットはないのでしょうか?
実は、ストックオプションにも色々なデメリットはあります。
箇条書きでざっと挙げてみると、ざっと以下の通りです。
●既存株主が保有する株式に、希薄化が生じる。
●株価が行使価格よりも下回った場合、逆に社員のモチベーションが一段と落ちる可能性がある
●ストックオプション付与の対象者以外の社員の士気が落ちる可能性がある
●税制適格ストックオプションに該当しない場合、権利行使時に給与所得として課税される
逆にモチベーションが下がってしまう可能性があることについてはイメージしやすいかと思います。
行使価格を上回ることができなかったり、株式報酬型のストックオプションだったとしても給与としてもらっていた方が利益が大きかったりした場合は、諦めムードが漂ってしまう危険があります。
また、「こんな頑張ってんのに、俺はストックオプション付与されへんのかい。もうやる気なくなったわ」っていう社員も現れるかもしれません。
また、上場後に株式報酬型ストックオプションを大量に付与してしまうと、会社に入ってくるお金はないのに発行済株式が増加するということになるので、既存株主が保有する株式の価値が低下してしまいます。
市場流通量が増えるとそのものの価値が低下してしまうのは、経済界では常識のことですよね。
また、税金面でもデメリットが生じることがあります。
ストックオプションには、所得税法上「税制適格ストックオプション」とじ「税制非適格ストックオプション」というものがありますが、この税制適格ストックオプションに該当しない場合は、権利行使価格と、権利行使時の株価の差額が給与所得として課税されてしまうというデメリットがあります。
先ほどの例でいうと、権利行使をした時点で50円の給与所得が発生してしまうということです。株式を売却しておらず、まだキャッシュインが生じていなくてもです。
悲惨なのは、権利行使時はめちゃくちゃ株価が高かったのに、その直後に株価が下がって売却損がでたときです。
売却損がでても権利行使時に発生した給与所得に課税がされてしまうので、損したのに税金を払わなアカンといったことが起こり得ます。
しかも、給与所得は総合課税なので、最高税率45%まで課税されてしまいます。
なので、税制的確要件を充足しているかどうか等は、付与される側も必ずキチンと確認しておく必要があります。
とはいっても、やっぱりストックオプションは魅力的
メリットだけでなくデメリットもあるとは言いましたが、やっぱりストックオプション
は魅力的ですよね。
上場前からストックオプションを持っていたら、上場後に莫大な利益を手にすることができる&キャピタルゲイン課税やから所得税20%が上限という非常に魅力的な金融商品です。
ベンチャー行ってストックオプション貰うぜー!!って言うのは全然ありだと思うし、もっとそういう人が増えて日本の社会がイキイキとしていったらいいよなーって思います。
マジ誰やねんって目線ですが。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました!