お金と幸せの関係
誰もが一度は考えたことがあるであろう、お金と幸せの関係。
お金持ちになりたいと思う同期→お金を多く持てば持つほど幸せだから。そう考えている人は多いと思います。
巷では、「お金で幸せは買えない。」という言葉をよく聞きますが、感情や情緒を一切抜きにして三段論法的に論じると、
人間は幸福になりたいと思う生き物である
↓
多くの人が、お金持ちになりたいと思っている
↓
多くの人にとって、幸福になること=お金持ちになることである
まあ多少無理があるロジックではありますが、少なくともお金持ちになって不幸になると思っている人はそこまで多くないと思うので、的外れなロジックでもなさそうな気がします。
なぜこんなことを急に書いているのかというと、先日友人に薦められたこの本を読んで、お金と幸せの関係について再度考えさせられたからです。
2014年に刊行された小説で、著者はあの「電車男」や「モテキ」を生み出した川村元気さんです。
すでに映画化されることが決定していて、2017年10月にロードショー予定だとのこと。
ネタバレになってしまうので、本で読みたい人は読み飛ばしていただきたいのですが、まあどんな話かを死ぬほど簡単に書くと、
・宝くじで3億円を当てた主人公(一男)がその使い方について相談するため、自身の会社を売却して既に大金持ちになっていた旧友を尋ねる
・その旧友に3億円をパクられる
・旧友についての手がかりを得るため、同じく会社の売却により大金持ちになっていた旧友の共同創業者3人に会いに行く
・主人公はそれぞれの共同創業者からいろんな話を聞いたり経験する中で、旧友の行方とともに、お金と幸せの関係を探す
・旧友を探し当て、本当の幸せとは何なのかという主人公なりの答えを持つようになる(文中で明文化はされていないが)
はしょりまくりで、大切なことは全く伝えることができませんが、大体こんな流れで物語は進みます。
個人的に面白いのと思うのが、旧友の共同創業者の3人がそれぞれ全く違う生活をしておきながら、お金に対する考え方に共通点があるっていうところなんですよね。
まず3人の特徴をざっと述べると、こんな感じです。
・十和子
美人。旧友の元カノであり、共同創業者として会社を売却し、大金持ちになる。
現在は普通の旦那と普通の生活をしている。
・百瀬
大柄で図太い男。同じく会社売却後に大金持ちになった後、ギャンブルにハマる。しかし、ギャンブルの才能が開花してしまい、現在はさらに金持ちになっている。
・千住
ザ・金持ち。税金対策のために宗教法人を立ち上げ、金持ちになるためのセミナーを始めたら、これにハマる。しかし、ほとんどお金は使わず、百瀬と同じく会社売却時よりさらに金持ちになっている。
この特徴を見ただけでも、3人の登場人物は全く違う生活をしていて、性格も全然違いそうだということが想像できますよね。でも、彼・彼女らのお金に対する考え方には共通点がありそうなのです。
まず、十和子は昔は貧乏だったけど、容姿が美しかった上に金持ちが喜ぶ愛嬌、そして素朴さすら表現できたため、数多くの金持ちの男に言い寄られます。そうして高価なバッグや食事を与えられることによって、お金のことを次第に愛するようになる。
しかし、交際している男のことが好きなのかお金のことが好きなのかがわからなくなり、胸が痛くなるほどお金を欲する気持ちと、吐き気がするほどのお金に対する嫌悪感を抱えたまま過ごすことになります。
そんな中、つくも(上述の一男の旧友)に出会い、この人はこれまでの男性とは違うと思って交際を始めます。
しかし、結局つくもも金持ちになると、高価なものを買い与えてくるようになり、結局お金は人を全く別の人間に変えてしまうほどのパワーがあるのかと十和子は思うようになります。
この苦しさから解放されるために後に公務員の一般人と結婚し、今では一切派手な暮らしはしていないけど、温和で幸せな日々を送るようになっています。
次に、百瀬はについて。
百瀬は、つくもを探しに訪ねてきた一男を競馬場に招待します。
そして一男に、「100万円貸してやるから、3連単にかけろ。勝ったら1億円や」と言います。
一男はこの誘いにのって見事3連単をあてて1億円を獲得します。
しかし、百瀬はさらに「この1億円を賭けよう。勝ったら3億円。失った3億円もチャラになるで?」と吹きかける。
迷った一男は再びこの誘いにのったものの、次のレースでは予想を外し、1億円をパーにしてしまう。
しかし、百瀬はここで一男に、
「今日、実はキミに馬券なんて一円も買ってないんや」と言います。
つまり、一男の頭の中で動いた金と、本物の金の違いなんてほとんどないということを身を以て伝えたのです。
その中で百瀬は、以下のようなことを一男に語りかけています。
「結局、金はどんどん増えていって、よう分からん親戚や友達や女がやたらと集まってくるようになった。そうなるともう悲惨や。ボクのところに来る奴全て金目当てに見えるんや。本物の友情があるはずやのに、その友達に裏切られることに怯え、本当の恋をしているはずやのに、その女は金が目当てやと思うようになっていく。。(以下、略)」
最後に、千住。
千住は大学生時代、幼馴染を交通事故で亡くし、そのショックから抜け出せなかったため、2年間北米大陸から南米大陸に向けてヒッチハイクとアルバイトをしながら旅をしていました。
しかし、結局自分の旅の目的は存在せず、ただ友人を失ったという現実から逃げているだけだと気づき、日本に帰ることを決心します。そして仕事を探しているなかで一風変わった広告を見つけます。
「信じることができる人を求む。僕が信じることのできる人。僕のことを信じてくれる人。」
そしてこの会社に応募し、一員となります。その会社が、まぎれもなくつくもが作った会社でした。
会社が倍々に成長する中で、多くの会社から事業売却の提案がでてくる。
最初は全員一致で売却は拒否していましたが、買収価額は数億円から数十億円と増え、最後には百億円近い提案がでてきます。
しかも、つくもを含めた4人に対して個別に売却の話をもちかけるようになっていました。
その中で、金持ちの生活の快楽を知ってしまっていた千住は会社を売却するか揺れます。そして、つくもに先に売却されてしまうのではないか?と疑い始めるようにもなります。
しかし、売却の是非を決定する取締役会の1週間前からつくもが姿をくらまし、連絡が途絶えるようになりました。
そしてつくもがいない取締役会の当日、千住は会社の売却契約書にサインをします。
裏切った千住に対して怒っていた百瀬も最後にはサインし、十和子は議決権を放棄したことから、結局会社は売却されました。
千住は、つくもが広告として掲げていた、「僕のことを信じてくれる人」になりきることができなかったのです。
そしてそのことに対する罪悪感を背負ったまま、セミナー講師としてお金と幸せの関係を探すようになります。
どうでしょうか。
なんとなく共通点があるように思いません?私は、3人には共通する点が一つあると思いました。
それは、3人ともお金に対する強烈なマイナスの感情を持ち合わせているということです。
実際にお金を持つようになると自由を手にすることができるかもしれませんが、その分恐怖感や自己嫌悪、人間不信といった幸福とは相反する感情が生まれてくることがこの小説で伝えたいメッセージのひとつなのかもしれません。
結局この物語では、お金と幸せの関係は一つではなく、人それぞれに答えがあるという結論が出されています。
私自身も、お金と幸せの関係については自分の中でしっかり定義づけておかなければなと思わされました。
まあ、そんなことを真剣に考えるようになるのは本当のお金持ちになってからだということは自分でも薄々気づいてはいますが、、笑
とにかく、気になる方は是非一度読んでみてください。小説というのがまた味があっていいと思いますので。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。