会計士の気まぐれ日記

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メルカリの上場の是非

日本人なら誰でも聞いたことがあるであろう、フリマアプリを展開している「メルカリ」が、東証に上場申請をしたことが先日の日経新聞により報じられました。

 

www.nikkei.com

 

メルカリは2013年に設立されているため、年内に上場した場合は若干4年での上場となります。

しかも、市場がマザーズとかではなくわ東証1部であった場合、異例とも言えるスピードでの上場となるでしょう。

では、メルカリは果たして上場すべきなのでしょうか?今日はそんなことについて考えていきたいと思います。

 

 

 

①上場時の資金調達額

スマホアプリがヒットしたことによって企業価値が高まり、結果として上場を果たした例として、LINEがあります。

LINEは2016年7月に東証及びNASDAQに上場を果たしており、日本の証券市場でも比較的大きな規模のIPOとして騒ぎになりました。

さて、LINEはこの上場によってどれくらい資金調達をすることができたのでしょうか??

 

 

 LINEが上場する直前期の2015年12月期の主要な財務指標は以下の通りです。

 

売上高:1,204億円

営業利益:19億円

総資産:1,224億円

 

 

さすがにすでに国内のインフラとなっていたこともあり、未上場企業の売上高としてはかなり大規模となっています。

そしてこのLINEの上場による資金調達額が1,286億円

売上、総資産の規模と比較してもなかなか大規模な資金調達額です。株式市場の力強さを実感させられます。

以下はLINEのB/Sの一部ですが、上場した瞬間にかなりのキャッシュリッチな企業になっていることがわかります。

 

 

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ここで、LINEとメルカリの状況は、スマホのヒットから上場という構図は共通しているものの、やっている事業自体も違えば、市場からの期待値も異なると考えられます。

どういうことかというと、LINEは上場前の段階で既に国内でのインフラとなり、本業のアプリ事業は成熟した状態となっていたため、市場からの期待値がそこまで高いと言える状況ではありませんでした。

スマホアプリと広告以外の事業で何かヒットするものがなければ、持続的な成長は難しいと多くの投資家は考えていたと思います。

 

 

 

一方で、メルカリは国内でかなり有名なサービスとなりつつはあるものの、まだまだ潜在的なユーザーがたくさん存在しています。

また、メルカリの経営陣はメディアにも積極的に露出しており、将来のビジョンに共感している投資家も多いと考えられるため、投資資金を利用して積極的に新規事業に投資して更に企業価値が高まるという期待を持たれやすい状況にあるのかなと思います。

このような期待は、IPO時の公募価格に大きく反映されるため、おそらくメルカリが上場した際の資金調達額は、企業規模と比べてかなり大規模になることが予測されます。

 

 

 

 

メルカリの直近2期の官報広告に記載されている財務諸表は、以下の通りです。

 

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まとめると、以下の通りです。

 

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さすがに新興企業とあって、売上といい営業利益といい、伸び方がすごいですね。

売上高122億円という規模感は、東証1部上場企業でも全然おかしくないくらいのものです。

とはいえ、先ほども述べた通り、メルカリはまだまだ潜在的な成長可能性があります。

海外の進出余地もあるし、こういうフリマアプリは使う人が増えれば増えるほど倍速で市場シェアが拡大するネットワーク外部性が働くと考えられるため、もっと企業価値は拡大すると期待することができます。

 

 

こう考えると、メルカリの資金調達額は大体1000億円から2000億円ほどになる可能性もあります。

いずれにせよ、LINEと同様、メルカリも上場を果たした瞬間にとんでもないキャッシュリッチな企業になることは間違いありません。

 

 

 

②上場によって変わる経営方法

上記のように、メルカリは上場することによって大きな資金を調達することが可能になります。また、経営陣の個人資産も大幅に膨らむこととなります。

この企業規模で何千億円もの資金が手元に入ってくると、なにか新規事業を興したいとなったときもそこまで困ることはないでしょう。上場時に調達した資金は返済義務のない自己資本ですから、借入割合を減らした安全な経営ができる可能性も高まります。

 

 

 

しかし、すべての企業にとって上場することが必ずしもよいとは限りません。

というのも、「上場する」ということは社会の公器になることなので、これまでのように経営者が自由に経営方針や事業ポートフォリオを決定するということが難しくなります。

 

 

例えば、経営者が「テーマパークを作りたい」という夢をもっていたとしましょう。

その会社が上場していなければ、基本的にオーナー社長の周りに反対する者がほとんどいない場合、カネさえあればその夢を叶えることができます。

しかし、その会社が上場していた場合は、不特定多数の株主の同意を得ることが必要となるのです。もしテーマパークを作ることが企業価値の増大につながらないと考える株主が大半であった場合は、いくらカネを持っていてもその夢を叶えることが困難になるのです。

また、「今は商機ではない」と考えて資金を寝かせていた場合、もっと新しい投資を積極に行って企業価値を高めろ!と敵対的買収を仕掛けられてしまう可能性もあります。

 

 

 

このように、上場することによって経営者は、これまでは気にかける必要のなかった「株主・株価と向き合う」ということにものすごく体力・気力を使ったうえで経営をする必要性が生じてしまいます。

これにより、意思決定の力が鈍って結果的に経営が悪い方向に傾いてしまうことも少なくないのです。

 

 

そのため、メルカリの経営陣が積極的な投資案件・構想をもっており、かつ、企業を私物化することができなくなることについての覚悟があるのであれば上場は歓迎されるべきですが、もしそうでないのなら上場なんてしない方がいいと思うし、もしそんな状況でも上場するのであれば、創業者達で一定比率以上の株式を保有するべきであると思います。

 

 

 

③結論、上場すべき?

上記で、上場することはいいことばかりではなく、株主の目線を常に気にするというストレスフルな面もあるということを説明しましたが、これまでメルカリの経営陣に関するインタビュー記事等を読んできた限り、その程度のことで彼らの経営の意思決定に歪みが生じるようなことはないと思っているし、企業を私物化して個人の富のみを追求するような低俗な倫理観しか持ち合わせていないとは思えません。

 

 

 

そう考えると、やっぱり上場は魅力的です。資金調達ができるだけではなく、株式市場での自社株の流動性が高まるため、企業価値を高めることができやすくなるし、企業価値を高めることによって買収時の交渉も有利にもっていきやすくなります。

恐らくメルカリは、当面はメルカリ新しい事業に躍進していくというよりかは、既存の事業を世界中に広めることに注力するでしょう。

上場で調達した資金力があれば、最初の数年は広告宣伝費に莫大なカネをかけて赤字たれ流しになったとしても、海外でもっと流行れば確実に売上規模も莫大なものとなると考えられます。

 

 

そうやってフリマアプリ事業が成熟してくるステージに差し掛かったら、その段階でフリマアプリ事業は「金のなる木」として位置付け、新たな事業に挑戦する。そして、既に高まった企業価値を利用して、株式交換等で新規事業に積極的に参入していき、そこでも成果を出すことができれば、メルカリは大化けするのではないかと思います。

 

 

 

 

そのため、私見としてはメルカリは上場すべきであると思います。

これからの動向が楽しみですが、上場したらメルカリ株は是非買ってみたいなとも思いますね。

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。