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会計士の気まぐれ日記

時事問題、自己啓発、会計、経済、金融、プライベート等に関する情報を配信しています。

東芝の減損の謎(続き)

以前、東芝の減損の謎 - 会計士の気まぐれ日記で取り上げた東芝の減損の件について今日はその後の進展のまとめ、及び今後東芝がどのような運命を辿るのかについて書こうと思います。

 

 

まず今回の件について、これまでの経緯を簡単にまとめてみます。

 

 

 

・2015年12月31日、東芝の子会社である米ウェスチングハウス(WEC)が、米CB&Iから米ストーンアンドシェブスター(S&W)を買収

・買収における取得価額配分作業について、1年間の猶予を設ける

・2017年に入って、S&Wの識別可能純資産が大幅なマイナスとなることが判明し、これにより約7,000億円規模ののれんの発生、当該のれんの減損が必要となることを発表

・2017年2月14日、当初予定していた四半期報告書の発表を1ヶ月間延期

 

 

 

識別可能資産が大幅なマイナスとなったということは、つまり、買収時の負債の公正価値が実は7,000億円以上 も存在したということです。企業結合時は、買収先の会社の資産と負債を基本的に全て時価等の公正価値で測定し、当該資産と負債の差額を識別可能純資産とします。そして株式取得時に、当該識別可能純資産よりも多く支払った分がのれんとなります。

一部の報道によると、今回のように負債の公正価値が当初よりもはるかに大きくなってしまったのは、CB&Iとの間で、識別可能純資産の測定中に生じた追加的な建設コストを、全てS&Wが負担する旨の契約書の文言が事後的に見つかったためと言われています。

 

 

S&W買収について、東芝本社側の幹部はほとんど関わっていなかったという情報から考えると、WEC幹部が当該契約書の文言を見落としたまま、買収に踏み切ってしまったことがそもそもの失敗にあるのだと思われます。

 

 

東芝を監査しているPWCあらた監査法人は、こんな急にで7,000億円規模の損失が生じてしまうような重要な契約書の文言を見落としていたと言われてしまったら、どう考えるでしょうか??

もちろん、「他にも損失を生じさせるような契約があるのではないか??」と思いますよね。

恐らくあらたの監査人は、今現地の弁護士とかも総出で契約書の内容を精査中であり、故に四半期報告書提出期日である2月14日までにレビュー意見を表明できず、東芝もやむなく決算発表を延期したのだと思われます。

PPA(取得原価配分作業)を完了させる期限である2016年12月期の決算を過ぎた後に識別可能純資産に誤りがあった場合、それは監査上は虚偽表示として識別されます。そのため、あらたとしてはここで「これ以上の減損が生じる余地はない」と確信できるレベルにもっていくまで、手続を実施しないといけないのです。多分、今東芝の監査チーム、特に一番上の業務執行社員は気が気でないでしょう。

 

 

では、東芝は今後どうなるのでしょうか?

すでに報道でも話があがっている通り、東芝は今回の減損によって、2017年3月期の決算で債務超過に陥ることを防ぐために、半導体モリー事業を分社化し、当該分社した会社を外部へ売却する可能性があります。メモリ事業の分社化自体は2017年3月31日をめどに実施する予定である旨をすでに公表しているため、あとはそのうちの何割くらいを外部に売却するか、もしくは売却しないのかが見所となります。

 

 

 

いずれにせよ、債務超過に陥った結果財務制限条項に陥って現状の借入金を即刻返済しなければならなくなった上に、銀行からの新規貸付が降りなくなるといった最悪のエースが起こってしまった場合は、東芝の資金繰りは一気に悪化し、倒産リスクが上がります。

下記のグラフは、過去のCF計算上の借り入れの額を、長期と短期で分けて集計したものです(単位は百万円)。見てのとおり2016年3月期における銀行からの借入金が、長期から短期にシフトしています。この傾向は、業績が悪化していて、銀行からの与信レベルが下がっている会社によく見られます。

 

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とはいえ、実は、仮に東芝のような会社で債務超過が解消できず、財務制限条項に引っかかったとしても、実務上銀行は急にこれまでの貸付額を全て返済するよう求めるわけではない可能性が高いのが事実です。また、このような日本を代表するような大企業に対して本当に全て即時返済を求めた結果東芝が倒産してしまうと、以下のようなことが起こりえます。

 

①路頭に迷う東芝の従業員の家族が増える

東芝に投資している投資家が多大な損失を被る

③今回のS&W における莫大な原発建設工事の追加コストを支払えず、日米間の関係を悪化させてしまう

 

 

上記が本当に起きてしまってはまずいのは自明の理でしょう。

仮に貸付先が全ての事業が悲惨な状態で、明らかに再起不能であるとなった場合は、たとえ日本を代表する大企業であったとしても銀行は貸付をストップします。

しかし、東芝では原子力以外のセグメントにおける事業はまだ全然悲惨な状態とはいえないでしょう。むしろ今回の原発の追加コストは、金額が莫大であるとはいえ、かなり突発的かつ一時的なものであることが想定されます。

そのため、銀行としても、短期ではあっても貸付を続けるのではないかと思います。また、現在の貸付金を即時返済しろといったことも言わないのじゃないかと思います。

 

 

 

そして、銀行としても国から色々裏で言われているのだと思います。

「あの会社を潰してアメリカの原子力関係の会社に7,000億円以上もの債務を返済できなくなると、そういうことに敏感そうなトランプ大統領の反感を買うことになりかねず、マズい。せっかく安倍さんが築き上げてきた米国との良好な関係を崩さないためにも、最大限に支援してやってくれ」

とか言われているんですかね。笑

 

 

まあこれはあくまで妄想ですが、いずれにせよ、東芝は潰れないのだと思います。というか、潰れないように第三者がなんとかする。東芝の昨年の不適切会計や今回の明らかな善管注意義務違反と比べたら全然罪が軽いホリエモンが完全にパブリックエネミー扱いされた一方で、東芝の役員は免責辞任するだけで許される。。。つくづく不条理な世の中です。

 

 

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。