会計士の気まぐれ日記

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東芝の減損の謎

すでに日経新聞の一面も飾っている東芝の一件。

2016年12月27日、東芝は、今季の決算にて数千億円の減損損失を計上する可能性があることを公表しました。

内容は、アメリカの子会社であるウェスチングハウス社(以下、WEC)が、2015年12月31日にChicago Bridge & Iron社(以下、CB&I)の傘下であったCB&I Stone & Webster社(以下、S&W)を100%買収したものの、S&Eの資産価値が当初より大幅に減少し、その結果のれん計上額が数千億円規模になり、そして当該のれんの一部または全部を減損することになりそうだということです。

 

 

 

ぱっと見てもわかりませんよね、何がどうなっているのか。

簡単に今回の事象を図示すると、以下のようになります。

 

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WECは主に原子力発電所を設計・建設する会社で、S&Wも似たような事業を営む会社です。もともと両社は共同で建設案件を担ったりしていたので、本買収でWECの傘下に収めることにより、一元的な管理を実現させようとしたものと思われます。

 

 

 

しかし実は、この買収にあたってWECがCB&Iに対していくら支払ったのかを東芝は公表していません。しかし、東芝が公表している有報を辿ると、買収にかけた金額をある程度推測することができます。以下は2016年3月期の東芝有価証券報告書ですが、取得日である2015年12月31日におけるS&Wの識別可能純資産は138億円とあります。

 

 

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東芝は当初、のれんの発生額を約105億円と公表していました。つまり、この識別可能資産138億円の会社を買収してのれんが105億円生じる予定であったということは、投資金額は大体250億円ほどだったことが考えられます(SECに提出した資料によると、実際の投資額は270億円だそうです)。 

 

 

 

そして今回、東芝はのれんの発生見込額が、105億円から数千億円になる可能性がある旨を公表しました。これは一体どういうことか。買収に要した投資額は変動するものではありません。今東芝もしくはWECは、S&Wの識別可能純資産がいくらになるかを測定していて、その測定の結果、識別可能純資産が大幅にマイナスになることが予測されているということです。

しかし、S&Wの公正価値純資産がいくらであったにせよ、取得時の識別可能資産がわずか710億円ほどしかない会社が、当初より数千億円も純資産の公正価値が減少するってことが現実的に考えられるでしょうか?

東芝が公表している情報によると、S&Wの年間売上高は約2000億円。売上高の規模的にも普通では考えられないことです。

 

 

何かS&Wが物凄く多額の潜在的な負債を抱えていて、それが顕在化する可能性が最近になって高まってきたということくらいしか今のところ推測ができません。まあ、原子力発電関係の事業をやっていたのなら、訴訟損失引当金とか環境汚染対策引当金関係の巨額な潜在的債務が存在していたのでしょうかね。

 

いずれにせよ、今回は子会社であるWECが買収した会社にどえらい闇があったというようなもの。東芝のWECに対する関与度合いがそこまで大きくなかったのなら、東芝の投資意思決定を追求しすぎるのは酷なのかもしれません。ただ、そもそもそんな闇を抱えた会社を買ってしまうWECを子会社化してしまった東芝が悪いと結局はなるのかもしれませんが。

 

 

海外子会社の買収は難しいですね。規模拡大やシナジーの獲得ができる可能性があるとはいえ、どのようなリスクを抱えているかがわからない。今回のように、どえらいリスクを抱えちゃってて結果うちも減損を計上せざるをえなくなったーみたいな惨事になりかねませんからね。

ただやみくもに売上高や利益の金額を大きくするために買収をするのは危険だということを、日本の大企業は痛感していることでしょう。

 

 

東芝の今後の動向を見ていきたいところですね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。