会計士の気まぐれ日記

ビジネスに関する有益な情報をお届けします。たまにただ思ったことや感じたことを書きます。

金持ちほど、税金を払わない?

最近、パナマ文書って言葉をニュースとかで耳にしませんでしたか?
これは、 パナマにある法人や株主の名簿を世界に公開した、21世紀最大の情報流出と言われている事件です。
日本ではあまり大騒ぎにはなっていませんが、海外では非常に大きな問題として取り上げられています。
では、なぜパナマ文書の事件は世間でこんなにも騒がれているのでしょうか?
今日はそれをちょっと考えていきたいと思います。


 
タックスヘイブンという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、税金がそもそも存在しない、もしくは税率が著しく低い国のことを言います。
その名の通り、Tax Haven(租税回避地)ですね。
バハマケイマン諸島、そして今回話題になったパナマ意外にも、世界のいろんな場所にこういった国が存在しています。




今回の事件で、有名どころではロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席、楽天の三木谷社長などが、このタックスヘイブンにある会社の株主であったり、出資者であったりすることが判明しました。
ではこのタックスヘイブンに設立された会社の株主等の氏名や住所などの情報が流出したことで、何がそんなに問題になるのでしょうか?


理由は、タックスヘイブンを利用して税金の支払いを避けることができるからです。
この理由から派生して、情報流出対象となった人物は、以下のような理由で大変な批判を浴びています。


・大統領などのような国民に税金を払ってもらうように促している立場にいる人間が、自国に租税を払うことを回避しているとはどういうことか
・金持ちの人間が税金を払わず、それにより減った税収を一般人が負担しないといけないのは酷ではないか



たしかにそうですね。
上記の批判はまともであり、このような批判が出てくるのは至極当然であります。



ここで一旦、簡単にタックスヘイブンを使って税金の支払いを回避する仕組みを非常に簡単に説明します。


まず、日本に法人Aを所有しているとします。
その法人がケイマン諸島などのタックスヘイブンに法人Bを設立します。
法人Bは、登記簿上で存在するだけで実際には事務所もなければ、なんの事業も行っていない単なるペーパカンパニーです。
そして、その法人Bが、投資や融資等を他の企業に行うことによって、利益を得ます。
しかし、法人Bはタックスヘイブンに存在するため、その利益にかかる税金は微々たるものとなります。


そして、その得た利益を、親会社である法人Aに配当金として還流します。
法人Aは、この法人Bからの配当は損益計算書上は収益として計上されますが、税務上、子会社からの配当金は基本的に益金に算入されないこととなっているため、法人Aは法人Bを利用することで、実質的に課税されない利益を得ることができたというわけです。



実際の取引はもっともっと複雑であり、こんな簡単な仕組みではないのですが、ざっくりと説明するとこんな感じです。



一応、日本にはこのようにタックスヘイブンを利用した租税回避を阻止するために、移転価格税制やタックスヘイブン税制というものが存在します。
タックスヘイブン税制は、簡単にいえば、ペーパーカンパニーのような実態のない会社はが得た利益を、日本国で得た利益と仮定して課税するといったものです。


実際にそのタックスヘイブンに事務所を構え、建物や棚卸資産などの資産の実体があった場合にのみ、当該税制は適用しなくてよいということにされています。
まあこれは、日本で今回のパナマ文書の問題があまり騒がれていない理由のひとつでしょう。
上記のように日本はそもそもタックスヘイブンを使った節税に厳しく、租税を回避するために煩雑なスキームを組もうとする人があまりいないからです。
事実、今回の情報流出で公になった人物のうち、日本人は諸外国とくらべてかなり少数でした。


じゃあ、私たち日本人はタックスヘイブンのことなんか考えなくてもよいのでしょうか?
そうではありません。
世界にはこうやって海外を利用して合法的に節税を行っている人物がいるという事実を知っておくべきだと思います。
彼らの行為が倫理的に正しいといえるのか。
そもそもタックスヘイブンなんて存在していていいのか。



21世紀の資本の著者であるトマ・ピケティ氏は、このタックスヘイブンを根絶する運動を始めたそうです。



みなさんは、タックスヘイブンを利用してお金持ちが脱税に近いようなことをやっている事実をどう捉えるでしょうか?


結構、世間ではめちゃくちゃなことを書いている記事とかを散見します。笑
例えば、タックスヘイブンにプールされている金が55兆円あり、これは日本の所得税法人税の合計を上回るから、こいつらがタックスヘイブンを利用していなかったら所得税法人税を撤廃しても日本はやっていけるのだとか書いてあるもの。


まず55兆円の金があったからといってそれがそのまま回避した税額ではないし、そもそも所得税法人税をまともに徴収してたなら得られた金額が問題なのに所得税法人税を撤廃してやっていけるというのはズレています。笑



もっと本質を考えるべきです。


とはいっても、この問題について、どういう意見が正解で、どういう意見が間違いとかは存在しないと思います。
これについてどう考えるかは非常に難しい問題です。
自分も、タックスヘイブンを利用して富裕層が国に払う税金を減らし、その分を消費増税等で一般庶民がカバーするということは決していいことではないとは思います。



かといって、タックスヘイブンを利用する側は、頭を振り絞ってリスクを覚悟の上で合法的に節税を行っているのだから、解決策を何も考えようともせずにその行為に対してただただ批判だけするということもどうなのかと思います。



いずれにせよ、この問題は自分の中で解決することはできませんでした。笑
みなさんがタックスヘイブンについてどうお考えかお聞かせください。


最後までお読みいただきありがとうございます。