会計士の気まぐれ日記

ビジネスに関する有益な情報をお届けします。たまにただ思ったことや感じたことを書きます。

為替市場が変動相場制である理由

昨日から今日の夜中にかけて、ドル円相場がかなり円高の方向へ動きました。

105円を割ったのはトランプ大統領の就任が決定した2016年11月以来のことなので、約1年半ぶりの円高水準にきているということですね。

107円〜111円くらいでロングポジションを保有している人が結構いたなかで、仮想通貨の規制やトランプ政権に対する懸念の高まり等数多くの不安材料が出てしまったため、先日のFOMCで米国金利が利上げされることが決定したにも関わらず、大きく円高になる結果となりました。

 

 

あ、ちなみにロングが結構溜まっていることは下記サイトより確認できます。

www.oanda.jp

 

 

僕はエントリーする前は必ずこのサイトでポジションの傾きを確認しています。今回の暴落でも、このサイトのおかげで大きく勝負に出て勝つことができました。使い方や味方は割愛しますが、サイトに書いてくれているので、参考にしながら是非活用してみてください。

 

 

 

 

さて、今日の本題。

昨日久しぶりにミルトン・フリードマンの「選択の自由」を読んでいました。

異端の経済学者ともいわれる彼は、アダム・スミスやフリードリヒ・ハイエクを尊敬するリバタリアンであり、ロナルド・レーガン元アメリカ大統領等に多大な影響を与えた人物とされています。

そんな彼は、経済界のあらゆることは、下記の3つの項目以外は全て市場の自由な働きに任せるのがよいというアダム・スミスの言葉を、政府の役割という問題に対するこれ以上ない回答として挙げています。

 

 

①社会を他の独立の社会による暴力や侵略に対し防衛する任務(国防)

②社会のすべての構成員を他のどんな構成員による不正や強制からも出来る限り保護する任務、つまり厳正な方の執行を確率する任務。(司法)

③ある種の公共事業や公共施設を樹立し維持していく任務(公共事業)

 

 

 

そして彼は、これ以外の例えば学校教育や社会保障に関する政府の関与は、最小限に止めるべきであると主張しています。

その中で、彼は関税も必要ないよね、って話をするのですが、その中で為替レートが基本的にどのように決定されているのかについて、非常に明快に説明してくれています。

なので、今日はこれをもとに、為替市場がなぜ変動相場制なのか?固定相場のもとだとどのようなことが起きてしまうのかについて簡単にまとめてみたいと思います。

 

 

 

世界には196の国が存在するといいます。

その中のどれひとつとして、文化が全く同じ国なんて存在しません。

資源ひとつ見たって、サウジアラビアでは石油が湧き出る一方で日本では出てこないし、カンボジアの村よりも日本の都会に住んでいる人の方が所得が高いのは誰も否定しようのない事実でしょう。

 

 

文化や環境が異なるのはさながら、国ごとに景気の良し悪しも異なります。

アメリカでは大不況なのに、ヨーロッパは景気がそこまで悪化していなかったり、どこかでハイパーインフレの状態になった国があっても日本は正常のまま、といったことは普通に有りえますよね。

これを念頭に入れたうえで、以下のケースについて考えて見てください。

なお、紙幣の交換業者は存在していないものと仮定します。

 

 

 

今、日本は少し景気が悪くなっており、なかなかハイスペックなノートPCが10万円で購入できる状態です。日本の電気屋を見ても、だいたいそれくらいの価格帯。

一方、アメリカは景気がそこそこ良いことから、全く同じノートPCが1,500ドルで売られています。つまり、アメリカの方が物価が高くなっています。

現在のレートは1ドル100円です。

 

 

この状況で日本に来たアメリカ人は、このノートPCを見てどう思うでしょうか?

 

「アメリカだと1,500ドル払わなければいけないのに、日本だと1,000ドルで買える。。これは買いだ!」

と思うはずです(もちろん、その人がPCを欲しいと思っている前提です笑)。

 

 

もしこのアメリカ人と日本の商人の間でこのPCの売買が成立した場合、PCを売った日本人は1,000ドルを手にすることになります。

しかし、PCを売ったこの日本人は、後に1,000ドルではアメリカで同じスペックのPCが買えないことを知ります。

 

すると、この日本人はどのような行動にでるでしょうか?

 

 

 

 

「日本の方が物価が安いのであれば、1,000ドルを持っているよりも、10万円に換金して日本で買い物した方が多く必要なものが手に入るな。。。よし、誰かにこの1,000ドルを日本円に交換してもらおう!」

 

 

 

こう思うはずです。

しかし、日本の方が物価が低く、アメリカの方が物価が高いことを日本人みんなが知っていたらどうでしょう?

この1,000ドルを手にするために10万円を譲ってくれる人がいるでしょうか?

 

 

そんなはずはありませんよね。

10万円ではPCが買えるのに、1,000ドルだと同じPCでも買えないのに、1,000ドルを欲しがる人なんていません。

なので、そもそも最初にPCを売った日本人も、物価の違いを知っていたら1,000ドルで売るはずなどないのです。

これが固定相場制で、1ドル100円の状態から変わらなかったとしたら、アメリカ製のPCは日本に一切売れなくなり、日本人は日本製のPCしか買わなくなってしまいます。

 

 

これだと貿易が成立しなくなってしまいますよね。

しかも、アメリカへ行こうとする日本人もいなくなってしまい、逆に、大量のアメリカ人が日本に安いものを求めて買いに来る→でも日本人はアメリカ人にモノを売りたくない。といったことが起こり得ます。

 

 

 

これを防ぐことができるのが、変動相場制です。

 

 

 

仮に日本のほうがアメリカより物価が安いのであれば、日本円とドルの交換レートを、円の価値が高くなるように動かすことで、ある程度解決することができます。

じゃあ、どのレートになるべきなのか?

 

 

それは、日本人がアメリカから購入するモノのドル建て価格が、アメリカ人が日本から購入するモノのドル建て価格に等しくなるレートです。

先ほどの例でいうと、

 

 

日本人がアメリカから購入するモノのドル建て価格→1,500ドル

アメリカ人が日本から購入するモノのドル建て価格に等しくなるレート→1,500ドル

 

となればよいわけです。

アメリカ人が日本からPCを購入するときに1,500ドルを支払わなければならない場合、どのレートだとよいかというと、

 

100,000÷1,500=66.7円/ドル

 

となります。

このレートだと、理論的には誰もドルと円を交換することについて文句は言わなくなります。

 

 

 

実際には為替レートは、実需だけでなく投機によっても動くし、他にも様々な要因で変動していますが、そもそも変動相場制である根拠は、このようなロジックから成り立っているのです。

「選択の自由」にはもっと詳細に書かれており、他にもいろいろな問題についてフリードマン独自の考えが論じられているので、非常に勉強になります。

一般的な書籍と比較すると文章は少し難解ですが、ぜひ一読されてはいかがでしょうか。

 

https://www.amazon.co.jp/選択の自由-新装版-―自立社会への挑戦-ミルトン・フリードマン/dp/4532355281

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。