会計士の気まぐれ日記

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原油価格が景気に与える影響

28日、OPEC石油輸出国機構)の会合で、原油の減産について合意がなされました。これを受けて、今日の株式市場も少しだけ高値がつきました。以下は、本日のWTI原油先物のチャートです。

 

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基本的に、原油の採掘量が引き下げられると、原油価格は上がります。そりゃそうですよね。少ないものの価値が上がるのは当然です。

じゃあ、原油価格が上がったり下がったりすると、景気にどのような影響を与えるのでしょうか?原油の価格が世界経済に大きな影響をもたらすからこそ、原油の産出量に世界中の人々が注目をするのです。そこで、今日は原油価格が景気にどのような影響を及ぼすのかを簡単に説明してみたいと思います。

 

 

まず、昨今原油価格がものすごい低い水準になっている一番の理由は、アメリカのシェール革命です。アメリカでシェールオイルが取れることが判明し、数年でOPECが生産する石油量の実に約15%ほどもシェールオイルが生産されました。

そんなに原油が急に増えたら、余って当然ですよね。当然価値は下がるため、その分原油価格は下落します。以下は原油価格の月足ですが、2014年にものすごい勢いで値下がりしているのがわかります。

 

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原油価格が下がれば、ガソリンや灯油の価格ももちろん下がります。飛行機で海外旅行へ行く際の燃油サーチャージだってだいぶ変わってきます。つまり、原油価格の下落は、私たち一般人にとってはメリットが大きいのです。ちょっと車で遠くへ行く時もガソリン代をあまり気にしなくてよくなるし、ばかにならない燃油サーチャージもなくなったりしますからね。

つまり、原油価格が下がると、個人消費が上がるのです。消費コストが少し減ればもっと消費しようとする人間の本能が働くのです。実際はそこまで大きくコストが減るわけでもないのにもかかわらず、減ったコスト以上の消費をしてくれるということです。消費税増税直前の駆け込み需要を思い出していただければわかると思います。

 

 

じゃあ、原油価格が下がれば、景気ってよくなるんじゃないの??と思うかもしれません。そうなんです、普通は、原油とかの資源価格が下がってくれれば、個人・法人の消費や投資が押し上げられる分、ある程度景気はよくなるのです。

しかし、近年はそうではありません。原油価格が下がっても景気は一向に良くならない。なぜか??

 

 

 

名目金利と実質金利という言葉を聞いたことがあると思います。。名目金利は、私たちが普段目にする金利。つまり、1億円借りようと思って銀行に行き、借入利率3%と言われたら、その3%は名目金利です。

実質金利は、名目金利から物価上昇率分、つまりインフレ率を除いた金利です。両者の関係を式で表すと、以下のようになります。

 

 

名目金利-物価上昇率=実質金利

 

 

つまり、投資家が投資意思決定をする際は、名目金利よりも実質金利が重要視されます。どういうことか。借り入れる時の利率が5%で、結構負担が大きいからやめようかなと思う時でも、将来の物価上昇率が7%なら、将来投資が功を奏すると考えられるから、たとえ多少多くの利息を払ってもそれを上回るリターンを得られるし投資しようとなるわけです。

このロジックでいくと、景気をよくしようと思ったら、この実質金利を下げればよいのです。

 

 

一般的に、原油価格が下がれば物価上昇率も少し下がります。こうなると、名目金利を下げないと実質金利が上がってしまいます。だから、主要国の中央銀行は、金利を下げる等の質的緩和によって、この実質金利をできるだけ低い水準にとどめておこうとするのです。

しかし!!最近はもう既に金利を切り下げまくって、日本なんか特に金利は0%付近になっています。そうなると、これ以上名目金利をむやみに下げることはできなくなる。最近のマイナス金利でもあんなに騒がれているのに、深堀りなんかしだしたらとんでもないことになるのです。

 

 

これ、どういったことが起こるかわかりますか?

名目金利は変わらないのに、物価上昇率だけ下がって、実質金利が上がってしまうといった現象が起きてしまうのです。そして、将来に楽観的になれない企業や個人投資家は、投資活動を消極化してしまい、結局景気をよくする方向には導いてくれなくなるのです。

 

最初に少し個人消費について触れましたが、普通は、原油価格が下がると景気はよくなるのです。なぜなら、

 

①原油価格の下落によって、物価上昇率が下がるが、名目金利が一緒に下がるから結局実質金利はあまり変わらず、投資家心理はそこまで冷え込まない

②原油価格により個人消費の増加

個人消費増加による景気押し上げの影響の方が、投資家心理の冷え込みに勝る

 

 

からです。しかし、最近は名目金利が下がらないために、①の投資家心理の冷え込みがかなり強く、個人消費の押し上げによる影響ではカバーしきれないのです。

まとめると、今の時代は、景気をよくしようと思ったら物価上昇率を上げる他に術はないということ。原油の産出量が制限されれば、それだけ原油価格が上がり、物価上昇率の増加がもたらす投資家の投資意欲が高まります。それが雇用創出や賃金増加につながり、景気もよくなるでしょう。極論を言えば、産油国が減産してくれれば景気はよくなるだろうということです。

 

 

まあでも、世界経済のために我先にと原油の減産をしてくれる国なんてないでしょうね。世界の経済を思っての行動が、自国を苦しめることになるのですから。

今日も最後まで呼んでくださり、ありがとうございます。