会計士の気まぐれ日記

ビジネスに関する有益な情報をお届けします。たまにただ思ったことや感じたことを書きます。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの会計処理

2017年に発足されたソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)。

孫正義氏が思い描く構想が実現される形で生まれたこのファンドは、サウジアラビア王国のパブリック・インベストメント・ファンドをはじめとする名だたる出資者たちにより生まれたプライベートエクイティファンドです。

よく、「10兆円ファンドだ!」と言われていますが、あれは「ソフトバンクの完全子会社でSVFの運営管理者であるGP/SBIA UKによる、キャピタルコールの出資コミットメントが、SVFとデルタ・ファンド(SVFと並んで設立されたもう一つのファンド)で合わせて977億米ドルに設定されている」ということであり、実際に現時点で10兆円が出資されているわけではありません。

 

 

 

この一文だけ読んでもあまり意味が分からないので、非常に簡単に説明すると、「運営管理者が、ソフトバンクを含む投資家にSVFへの出資をお願いできる上限が約10兆円である」ということですね。

ただし、SVFの目的のひとつに「IRRの最大化」があるため、出資だけでなくレベレッジをかけて借入による資金調達も行うことがあるとのことです。

 

 

もはや完全に携帯電話の会社ではなく、生粋の投資会社となっているソフトバンク

孫さんのズバ抜けた投資センスで、今後大きな成長が期待される企業に莫大な金額を投じています。

アリババやNVIDIAに対する投資の事例に鑑みても、SVFが今後継続的にソフトバンクグループへ多大なる収益貢献をするであろうことは間違いないと思います。

それにしても莫大な資金力といい、孫さんの出資者を口説く力といい、、すごすぎてなんかもう何がなんだか分かりません。笑

 

 

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ソフトバンクHPより)

 

さて、ソフトバンクの2018年3月期の決算発表が5月9日に控えています。

その決算発表が行われるのに先立ち、ソフトバンクグループがSVFをどのように会計処理しているのか、今更ではありますが簡単にポイントだけおさらいしておきたいと思います。

SVFに対する会計処理で押さえるべきポイントは、ざっと以下の通りです。

 

 

 

ソフトバンクグループの連結BS上、SVFの投資先は、子会社以外は全てFVTPL(公正価値の変動による評価損益を全てPLで認識する会計処理方法)で処理。子会社(現時点では、ARMのみ)は、通常の連結と同様であり、評価損益はでない。

●ただし、SVFのセグメント利益には、子会社の評価損益も含めて表示される

●SVFの外部投資家持分は、「負債」として計上(非支配持分ではない)。

●SVFの投資成果は、ソフトバンクグループの連結PL上、「SVF営業利益」として表示。

●この「SVF営業利益」のうち、外部投資家持分に該当する部分は、営業外費用として差っ引かれる。

 

 

 

 

まあ大体こんな感じです。

この記事の末尾にリンクも貼っていますが、ソフトバンクが2017年9月1日付で開示している「Softbank Vision Fundの会計処理概要」の15頁と19頁に分かりやすい図が載っています。

 

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19頁は会計の専門家でない方は「なんじゃこりゃ!」って思ってしまうかもしれませんが、何か特別難しい会計処理をしているなんてことは全くなく、ほとんど通常の連結と変わらないと思っていただいて結構だと思います。

実際に財務諸表を読むときは、

 

①SVFの投資パフォーマンス(投資先企業の評価損益)は、連結PL上の「SVF営業利益」を見ることでわかる(ARMのパフォーマンスも併せて見たい場合は、SVF事業のセグメント利益を見る)。

②上記SVF営業利益から、連結PL上の「外部投資家持分の増減額」を差し引くことで、ソフトバンクグループに帰属するSVFの投資成果がわかる。

③「外部投資家からの出資額」と連結PL上の「外部投資家持分の増減額」の合計が、連結BS上の負債項目において「外部投資家持分」として表示されている。

④SVFの出資・分配は財務活動によるCFに表示され、SVFによる投資・売却は投資活動によるCFに表示される

 

 

 

これくらいだけ理解しておけば、SVFの投資パフォーマンスや、外部投資家にどれくらい分配されているのかが簡単にわかると思います。

ソフトバンクは四半期報告書でも他の会社の有価証券報告書と同じくらいのボリュームで開示を行なっているため、SVFに関する事業がどのようなものなのかもより詳しく知ることができると思います。

開示を見ていて思うのですが、ソフトバンクのIR担当の方々は本当に優秀な方々が勢揃いなのでしょうね。これだけ詳細に自社の業績や財政状態を説明している企業は、超大企業でもあまりないように思います。(それだけに、担当者の方々はなかなかの激務であることも窺えます。。)

 

 

 

以上が、SVFの会計処理に関する概要でした。

もっと詳細を知りたい方は、以下のリンクから資料をご覧になってみてください。

2018年2月9日に公表されている資料には、会計処理だけでなくSVFのビジョンやビジネスモデルも説明されています。

 

 

https://cdn.softbank.jp/corp/set/data/irinfo/presentations/investors/pdf/2017/investor_20170901_01.pdf

 

https://cdn.softbank.jp/corp/set/data/irinfo/presentations/analyst/pdf/2017/investor_20180209_02.pdf

 

ちなみに、4月30日に公表されたスプリントとTモバイルの合併については、Youtubeでまた説明しようかと思っていますので、そちらも是非見てみてください!!

まだ始めたばっかですが、フザけたお面被って色々説明しておりますので。。笑

 

www.youtube.com

 

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!!