会計士の気まぐれ日記

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「お金2.0」のまとめ

2017年も終わりに近づいてきましたが、年明けに素晴らしい本に巡りあうことができました。

株式会社メタップスの代表取締役社長を務めておられる佐藤航陽さん著の「お金2.0ー新しい経済のルールと生き方ー」という本です。

 

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

 

 テクノロジーについてそこまで詳しくない自分でもかなり理解しやすく書かれており、佐藤さんの頭の中で思い描かれていることの一部を覗かせてもらっているような気分になることができて非常に面白かったし、勉強になりました。

そこで、今日はこの本について少しまとめてみたいと思います。

 

 

 

まず、この本の章立ては以下の通りです。

 

第1章 お金の正体

第2章 テクノロジーが変えるお金のカタチ

第3章 価値主義とは何か?

第4章 「お金」から解放される生き方

第5章 加速する人類の進化

 

 

章立てはこのようになっていますが、もっとざっくりこの本の流れを書くと以下のようになるかと思います。

 

①成長する経済の特徴は何か

②あらゆるものが「分散化」した社会になっていく

③資本主義社会から、価値主義社会へと変遷していく

 

それぞれ簡単にどのようなことが書かれているかまとめてみます。

 

 

 

①成長する経済の特徴は何か

本書では、テクノロジーの発展によって、経済は「読み解く対象」から「創り上げる対象」になると述べられています。そして、経済を創り上げるためにはどのようなことに留意すればよいのかについて、既存の成功している経済に存在するパターンを例示した上で説明してくれています。

佐藤氏曰く、発展する経済には以下の5つの要素が備わっていることが多いそうです。

 

 

 

  1. 報酬が明確である(インセンティブ)
  2. 時間によって変化する(リアルタイム)
  3. 運と実力の両方の要素がある(不確実性)
  4. 秩序の可視化(ヒエラルキー)
  5. 参加者が交流する場がある(コミュニケーション)

 

これらの5つの要素を全て兼ね備えているのが、Facebook等に代表されるSNSです。

 

・イイネという報酬欲求を満たすシステムが存在し

・常に状況が変化し

・運良くバズることもあれば、実力でバズることもあり

・フォロワー数等の目に見えないヒエラルキーが存在し

・DMやリプライを通じてコミュニケーションをとれる

 

 

こう考えると確かにSNSは5つの要素全て揃っていますね。

 

さらに上記5つのポイントを押さえた上で「経済システムの寿命を考慮する」ことや、「共同幻想を創り出す」ことで、さらにその経済システムを持続的に発展させることが可能になるということです。

人間は本質的に飽きやすい生物であるという特徴を捉えた上で、若者のユーザー離れを想定してワッツアップやインスタグラムをかなり初期の段階から買収しているFacebookは、これらの特徴をかなり上手く射止めている例であることも書かれています。

 

 

こんな感じで、本書の前半の多くは、経済システムがどのように動いており、成長するためのキーは何なのかが厚く、かつ分かりやすく書かれています。

 

 

②あらゆるものが「分散化」した社会になっていく

ビットコインが、発行主体の存在しない「分散化」されたサービスである、ということを聞いたことがある人も結構多いんじゃないでしょうか。

佐藤氏は、これからの社会は、ビットコインのようにあらゆるものが分散化していく社会になるとおっしゃっています。

分散化と一言で表現しても分かりづらいですが、簡単に言えば分散化というワードは以下の3つに分類して説明することができます。

 

・シェアリングエコノミー

UBERやAirbnbのように、実際に資産を持つのではなく、資産を持っているもの同士を繋げる役割を果たすサービスがここ数年で爆発的に発展しました。このように、ネットワークが発展することにより、価値を共有する所謂シェアリングエコノミーが機能しやすくなってきていることが述べられています。

 

・トークンエコノミー

聞きなれないワードかもしれませんが、簡単に言うと法定通貨だけでなく、あらゆるものの価値を可視化することができる社会になるということが書かれています。

トークンは、簡単に以下のように定義づけられています。

 

トークンとは、証拠・記念品・代用貨幣・引換券・商品券などの意味を持つ英単語。
プログラミングではソースコードを解析する際にそれ以上細かい単位に分解できない文字列の並びの最小単位(要素名や演算子など)のことをトークンという。」

(Source: https://www.blockchain-labo.jp/cryptocurrency/token)

 

仮想通貨をはじめとして、新たに価値のある通貨が発行されるということがここ数年で起きていますが、ある特定のコミュニティー内で特定のサービスを受けるために使えるような通貨としてのトークンが発行されたり、特別割引や優待として利用できるトークンが生み出されたりといった経済社会、つまりトークンエコノミーが到来するということです。このようなトークンエコノミーと既存のビジネスモデルの大きな違いは、経済圏がネットワーク内で完結している点であることが述べられています。

 

  

・レーティングエコノミー

(本書では「評価経済」と書かれており、この名前は僕が勝手に語呂合わせでかいているだけです。笑)

昨今、インスタグラマーやYoutuberをはじめとしたインフルエンサーの台頭が起きています。そして、フォロワー数が非常に多くいるということで年収が億単位になっている人も実際に存在するようになってきています。そのような社会では、例えば1億円という現金よりも、100万人のフォロワーの存在の方が価値があったりすることがあります。

このように、ネットワーク型社会に移行することで、個人→個人への価値の提供という流れがメインとなるレーティングエコノミーがどんどん主流化していくよね、ということが書かれています。

 

 

 

 

③資本主義社会から、価値主義社会へと変遷していく

じゃあ、②で述べたように社会が分散化していくことで、どんなことが起きるのか?ということが本書の後半では述べられています。

これまでの既存の資本主義社会では、有用性としての価値が主軸におかれていたと佐藤氏は言います。例えば、本であったり学校であったり株式投資であったり、人々は、社会を生き抜くにあたって有用だと思うものに価値を見出していました。

それが、ネットワークの発達により社会が分散化されていくと、内面的な価値社会的な価値も重要視されるようになってくると書かれています。

 

 

内面的な価値は、実生活に役立つわけじゃないんだけど「この人を応援したい」とか「この人は面白い」といった、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼす時に生み出される価値のことをいいます。

内面的な価値が認められる社会になると、②のレーティングエコノミーでも述べたようなYoutuberも、ちゃんとした職業として成り立つよねということですね。

お金持ちだったり、専門知識がたくさん備わっているような人だけが価値のある人というわけではなく、例えば馬鹿らしいけどめちゃくちゃ面白い企画を動画を撮ったりすることができる人も、ちゃんと価値のある人として認められるようになるということだと思います。

 

 

 

そして、内面的な価値が見出されるようになったあとは、最終的に社会的な価値を見出すようになるとのことです。

「この人が構想している事業を成功させたい」とか、「この国の人々の生活をもっと豊かにしたい」という利他的な欲求ですね。

 

 

このように、これまでの資本主義社会よりも価値の尺度が多様になり、個人がいろんな方法で活躍することが可能になる時代がやってくるということがやってくるということが本書では書かれています。このことを具体的に例示している箇所を抜粋してみます。

 

歌がうまいと現実社会ではカラオケの二次会で盛り上がるぐらいですが、これからはこういった経済的に無価値だと思われていた趣味も強みになります。仕事が終わった後にネット上に歌っている動画をアップして、サービス内で多くのファンを獲得したとします。そのサービスが発行するトークンを報酬として受け取り、そのサービスが拡大していけば初期から活動していたのでさらに人気を集めるようになります。結果的にユーザーが増えて競争が激しくなって前ほどの視聴者を集められなくなったとしても、サービスの拡大を通して受け取ったトークンの価値が上昇していれば人気を失ってもこれまでの活動は資産として残ります。(P.193)

 

ルールそのものが増えるから現在の資本主義経済の中ではうまくいかない人も、全く違うルール上では活躍できる可能性がある社会になるということは、非常に面白いことじゃないでしょうか?

既存の経済システムに辟易としている人はかなり多いと思います。したくもない仕事をし、うざい上司のもとで仕方なく命令を聞き、全く行きたくない飲み会に連れて行かれ・・・でも生活していくためには仕方ない。

そんな人も、個性を発揮することでちゃんと生活をすることができる社会になったら最高ですよね。

でも、こういう社会が到来するからこそ、佐藤氏は、特に若者は)内面的な価値に着目することが非常に大事だとおっしゃっています。

お金の相対的な価値がどんどん下がっていく価値主義のなかでは、金銭的なリターンを第一に考えるほど儲からなくなり、何かに熱中している人ほど結果的に利益を得られるようになると。

 

 

 

本書の最後の方では、以下のような一文があります。

 

この世界で活躍するためには、他人に伝えられるほどの熱量を持って取り組めることを探すことが、実は最も近道と言えます。そして、そこでは世の中の需要だったり、他の人の背中を追う意味は薄くなります。なぜなら、内面的な価値ではオリジナリティ、独自性や個性が最も重要だからです。その人でなければいけない、この人だからこそできる、といった独自性がそのまま価値に繋がりやすいです。(P.224)

 

 

いろんな選択肢があって自分の好きな経済を選択することができるようになるけど、自分が本当にしたいことは何なのか?熱中していることは何なのか?ということを真剣に考え、それらの問いに対する明確な答えを持っておかないと、価値主義の社会になったとしても何も変化は起こらないし、むしろ生きづらくなるということも言われているような気がしますね。

 

 

 

 以上は本書のほんの一部ですが、だいたいこんな感じですかね。本当に価値のある本だと思うので、是非本書を手に取り読んでみてください。新年の計画を考える上でも役立つこと間違いなしです。

 

 

 

ということで、本日も最後までお読みいただきありがとうございました!