冨山和彦さんの講演
私のような会計士候補生は、実務補習所という場所へ3年間通って一定の単位を取得し、その後に修了考査という試験をパスして、晴れて公認会計士になることができるのです。
つまり、「会計士の気まぐれ日記」というタイトルを謳っているにもかかわらず、正確には私はまだ公認会計士ではないのです。笑
というわけで、その実務補習所へ行ってきました。今日の講義はなんと、僕が以前にも幾度が紹介させていただいた冨山和彦さんによる講演でした。
さすが、数々の修羅場をくぐり抜けて来られた経営のプロフェッショナルとあり、3時間の講義があっという間に終わりました。
今日は、備忘という意味も兼ねて、講演内容の一部を簡単に箇条書きで紹介させていただきます。
日本に顕著な課題(個別企業レベル)
・ゼネラリスト指向の人事制度では、プロフェッショナルは育ちにくい。
・これからの時代、ゼネラリストはAIの発達等により淘汰されていくため、欧米のようなJob Discription体制をとるべき。
・それぞれの業務で求められるレベルが、今は格段に上がっている。
・合議制が採られている中で最も重要なのは、CEOを誰にするか。そのため、ろくに検討もせずにそこらじゅうの人にオファーを出すようなふざけたことはしないで、優秀な30代〜40代等の人間に圧倒的な成長ができる道を与えて試行錯誤したりすることで、真面目に後継者を選出しなければならない。
・経営≒意思決定力×実行力。日本は実行力に長けているが、意思決定が下手くそ。意思決定の方向がずれていると、マイナスの影響はむしろ拡大してしまう。意思決定力でキーとなるのは、徹底的な「合理主義」であり、「情」に流されてはいけない。
日本に顕著な課題(産業レベル)
・産業横断的な低い人材流動性。
・欧米ではプロフェッショナルの流動性が非常に高い。
・銀行でずっと勤務してきた人は製造業の社長が務まらないというのは嘘。経営みたいなプロフェッショナルな仕事は、自分の属してきた業種によって成果が決まるわけではなく、個人のバリューで決まる。そのため、経営をナメてきた人は、どれだけ業界に詳しくとも、会社を潰す。
・その会社でしか仕事ができない、「会社病」にかかっている人が多すぎる。
これから会計士に求められる能力
・チェックリストを埋めるような作業をしているだけの人と、数字の裏の背景を考えることができる人では、天と地の差がつくようになる。
・数字の裏にある実態を読み解くことができるようにならなければならない。例えば、ROEが10%を超えている部分だけを見て「この会社は優秀だ」と言い切っちゃうようなバカになってはいけない。その会社は、財務レバレッジが高いだけかもしれない。
・財務会計の知識を有していることは、必要条件であるものの、十分条件ではない。管理会計、経営会計や、ファイナンスの知識も身につける必要がある。
・数字の裏の実態を読み解くことができるようになるために、普段から世の中の森羅万象に興味を持たなければならない。例えば、「なんでセブンイレブンは他のコンビニを凌駕しているのに、全国展開されていないのだろう?」とかを考える癖をつけると、意外と世の中が面白いことがわかるし、非常に仕事にも役立つ。
・古典や歴史のような教養を身につける意義は、結局は「人を観察する」ということ。様々なタイプの人に興味を持つことから、ビジネスへの興味を持つことも始まる。
・監査を行うときは、徹底的に冷徹な判断を下すことが大切。一つの監査契約を失っても君の仕事はなくならないが、逮捕されると全て失う。
とにかく、世の中へもっと興味を持てということを何度も繰り返していらっしゃいました。これこそが、プロフェッショナリズムを磨く上で一番基本かつ重要なことなのでしょうね。
同氏のおすすめの本も紹介されていたので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
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- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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