大前研一「日本の論点2017〜18」
3年程前くらいから毎年出版されるようになったこの本。結構面白くて勉強になるので、毎年購入しています。
今回も、新しく2017年〜2018年versionが出ていたので、購入しました。
著者の大前研一氏は、言わずと知れた知識人。彼のHPから略歴を少し抜粋してみました。
・マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科卒(博士号)
・起業家養成学校「アタッカーズ・ビジネス・スクール」を開設し、塾長に就任
・UCLAの大学院公共政策学部総長教授に就任
これらは彼の経歴の一部なのですが、この経歴を見るだけでも彼が恐ろしいエリートであったことが窺えます。彼がどんな人なのか見たことがないという方は、以下の動画をみてください。
ホリエモンと、主に原発の話をしているのですが、その喋り方、話の内容、話の筋道の立て方等が本当に素晴らしいです。私自身、原発とか関する知識は全くと言っていいほどないのですが、彼の話が素晴らしすぎて、知らない内容なのに聞くのが面白くて、気づけば1時間ぶっ通しで聞いていました。笑
今回も、この「日本の論点」では、現在日本でトピックになっているイシューや、最低限ビジネスマンとして知っておかなければならない情報、およびそれに対する考察を盛りだくさんで紹介してくれています。内容の全てを紹介するのはできないので、とりあえず目次を紹介したいと思います。
1.セカンドライフは8万時間の自由時間がある。何をしますか?
2.巨大ビジネス創出!わが新・経済理論「アイドルエコノミー」
3.直伝!「アイドルエコノミー」実践法
4.日本を大好きになる外国人旅行者が日本経済を底上げする
5.ビールだけじゃない、日本企業のグローバル化が"周回遅れ"の理由
6.世界的な大企業で続発!データ偽造問題は、なぜ起こるのか?
8.ゴーン社長が三菱自動車を買う真の狙い
9.東証一部上場するも、見えない郵政三社の未来絵図
10.アベノミクスの景気浮揚効果を阻む"低欲望社会"の現実
11.伊勢志摩サミットで"後味悪さ"しか残せなかった安倍首相
12.ホンハイの買収申し出を生け入れたシャープの甘い認識
13.日本には核兵器を開発するだけの能力があるのか
14.なぜ老人ホームや介護施設で"虐待"が増加しているのか
15.世界を席巻するポピュリスト旋風は、どこまで広がるのか?
16.ドナルド・トランプの過激発言はなぜ米国民に受けたのか
17.「世界一」だけをつくるイタリアの地方創生法
19.パナマ文書は氷山の一角、今後も続く税逃れの手口
20.大国のリーダーが一目おくメルケル首相のリーダーシップ
21.蔡英文・新総統誕生、中台関係はどう変わるか
22."アイドル"スー・チーしはミャンマー国民を満足させられるか?
23.ロシアはなぜ、IS掃討を名目にシリアに軍事介入したのか?
24."Change" "Yes We Can" ーオバマ氏はアメリカをどう変えた?
Column-大前流「自分を変革する」三つの方法
こんな感じです。これでもかというくらいコンテンツが盛りだくさんですね。この本を1冊、しっかり内容まで理解すれば、社会人として世間話をする際に事欠くことはないでしょう。
特にこの本の中でも面白いなと思ったのが、「アイドルエコノミー」という考え方と、有名な「自分を変革する」三つの方法です。これだけ今日はちょっとだけ紹介させて頂きます。
「アイドルエコノミー」と聞くと、AKB48とかを思い浮かべるかもしれませんが、その意味のアイドルではありません。Idolではなく、Idleです。つまり、ぼんやりとか休みとかいった意味です。
居酒屋とかでお客さんが全然いない状態のときを、「アイドルタイム」とか言ったりしますよね。あのアイドルです。
で、これからの時代、事業を成長させていこうと思ったら、このアイドル状態にある人、モノを存分に使って、操業度を高めていかなければならないと大前氏は主張しています。
例えば、現代の社会はモノが溢れており、あらゆるものの操業度が不足しています。AIの発展によって失くなると言われる職がたくさんあるとはいえ、まだまだ足りないものっていっぱいあるのです。
例えば、ホテル。海外からの旅行客が増加しており、それにまた最近円安傾向に転換している点を考えれば、これからも来日観光客は増加の一途を辿る可能性が高いです。そして、それに対応できるホテルのキャパシティが今いっぱいいっぱいの状況。
現在のホテル・旅館の総客室数が約160万室で、それに対して2016年1月〜同年10月までの訪日外国人数が約2011万人です。これを見るとまだ大丈夫じゃないか?という印象を受けるかもしれませんが、
自分の理想とする価格帯のホテルは既に予約いっぱい→1泊3万円以上する高級ホテルしか空きがない→今回は諦めようか
と考える外国人がかなり増えてしまう可能性があります。しかし、日本には宿泊機能を有するスペースがないのかと言われれば、そうではありませんよね。1人で住むには広すぎるとか、出張が多くてほとんど家に帰ることがない等、自宅のアイドルタイムを抱えている人はかなり多いと思います。そういうアイドルタイムを使うために出てきたのが、Airbnbとかの民泊サービスです。このように、アイドルタイムを狙ったビジネスが、これから当たりやすいのではないかということです。
例えば、私が所属している監査法人でも、Assistant Auditor(通称AAさん)といって、監査業務の補助作業をやってくださる方々がいます。単純なデータ入力作業や、監査調書の管理、書類の整理等です。でも、こういう方々は、結構アイドルタイムを持ってしまっていたりします。
「私今手が余っているのですが、何かやることはありますか??」
このように聞かれることが非常に多いのです。実際本当に何も委託できそうな作業がない場合、AAさんにアイドル時間を作ることになる上、何か依頼できそうな仕事がないかを無理矢理探す僕らの時間も削減されてしまいます。
こういうのを解決することができるクラウドソーシングサービス等があればいいのでは?とも思いますね。遠隔でもできる作業を依頼し、手が空いた人がその作業を実施する。こんな感じで操業度を極限まで高めることができれば、人数不足の状況に陥ることもないのかもしれません。
アイドルになっている人・モノを最大限に活用する、またはそれらを流動的に提供できるような仕組みを作ることができれば、ビジネスとして結構成り立つのかもしれません。空き時間でエクセルのデータ入力等の雑務をやってくれる学生だけを集める人材派遣とかね。
次に、大前研一流の「自分を変革する3つの方法」について。
有名ですが、彼は、人が変われる方法は次の3つしかないと主張しています。
①時間配分を変える
②住む場所を変える
③付き合う人を変える
①時間配分を変えるというのは、例えば「発言しない会議」や、「愚痴を垂れるだけの飲み会」、「二日酔いで寝腐るだけの時間」はマジで無駄な時間です。そういう無駄な時間を、スキル向上のために自己学習をしたり、テニスやサーフィンなどの趣味でリフレッシュしたりする時間に変えるだけで、かなり人間として成長するそうです。彼は、漫然とテレビやYouTubeを見る生活を続けて入れば、脳は退化していくばかりだと言っています。退化しきった脳には、新しいことを始めるパワーも、仕事で成功するノウハウも身につきません。大前氏は、思考の素材となる情報をとにかくインプットする時間を増やそうと言っています。ホリエモンと主張していることが同じですね。
②住む場所を変えるというのは、自分の頭を刺激するためだと言います。確かにこれはよくわかります。私は生まれてから東京に出てくるまで、ずっと神戸の岡本という町で暮らしていたのですが、ずっと同じ町にいると、逆に周囲の変化に気付きづらくなります。関心を持って見ないからです。「あれ、あそこの店潰れているけど、前何があったっけ?」とかいう経験が結構ありました。
それが、東京に出てきてからは、新しい発見がいっぱいですごく刺激になります。
「あれ、こんな場所にこんなカフェあったんか・・・しかも駅から少し離れていて中も広くなさそうなのに、人はいっぱい入ってる!なんでや??」
みたいなことが結構あるのです。同じ国でもこういうことがあるのですから、海外へ行くともっとそういった発見があるのは間違いないですよね。思考を呼び起こすという意味で、住む場所を変えるのはいいアイデアだと思います。
③付き合う人を変えること。気の合う人ほど、役に立たない相手はいないとさえ言っています。気の合う友人は有難い友達として取っておいて、気が合わない人や車内でいつもぶつかる人と、あえて付き合う。飲みに誘う。よくよく話してみると、「そういう理屈があったのか」と意外な一面に気づいたり、自分にはない発想に出会えたりするということです。
付き合って一番役に立つのは、自分と違った発想をする人。それによって自分の発想力が磨かれるし、自分の論理に間違いがあれば気づくとのことです。大前氏は、「外国人と付き合う一番のメリットは、すべてが「自分とは異なる視点」を持っているということだと述べています。日本には、会社に入っても大学の同好会のノリで安易な人間関係を築いているサラリーマンがあまりに多いと警鐘も鳴らしています。
どうでしょうか。
コンテンツ盛りだくさんで本当に面白い本で、同時に、自分がいかに情報のインプットが足りてなかったり、普段から頭に与えている刺激が全然足りていないと再認識させられます。是非、ご一読ください。
最後までお読みくださりありがとうございました。