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会計士の気まぐれ日記

時事問題、自己啓発、会計、経済、金融、プライベート等に関する情報を配信しています。

公認会計士の質は落ちたのか

会計

ここ数日、日経新聞で「揺れる監査」シリーズとして公認会計士による会計監査の無力さを語る記事が取り上げられていました。先輩にも、「あの記事読んだ?ぼろくそ書かれてるよね。。」と言われました。

公認会計士の独占業務である会計監査は、企業が発表する財務諸表(簡単にいうと、決算書)がちゃんと作成されていますよっていう意見を表明して、その財務諸表の信頼性を担保する業務です。例えば、Aという会社が発表した財務諸表に、公認会計士の「適正意見」があると、投資家は安心して投資をすることができるのです。

 

 

仮にA社の財務諸表が嘘ばっかりの絵空事だったらどうでしょう。毎期利益が伸びているような財務諸表を発表し続ければ、A社の株を買いたいという投資家がめちゃくちゃ増えます。しかし、ここで急にA社が粉飾していたと報道されたら、この間の東芝のときのように株価は暴落して、A社の株を買っていた投資家は大損を被りますよね。こういった事態にならないように、会計監査が行われているのです。

 

 

そして、冒頭の日経の記事には、最近その会計監査がちゃんと機能していないのではないかという旨の内容が書かれていました。つまり、財務諸表に適正意見が表明されていたとしても、信頼できないよってこと。こんなこと言われたら、僕らがやってる仕事は意味がないってことになっちゃいますよね。笑

そこで、今日はなぜ公認会計士に対する信頼が薄れてきているのかを考えてみたいと思います。

 

 

・優秀な人材の不足

これは、会計監査の品質が落ちてきていると言われる大きな原因です。下のグラフをみてください。

 

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これは、公認会計士試験の願書提出者と合格率の推移です。会計監査を行うことができるのはこの試験に突破することができた人だけなので、このグラフは監査業界において非常に重要な意味を持ちます。

 

2006年から2007年にかけて、いきなり合格率がめちゃくちゃ上がっていますよね。10%未満で推移していた合格率が、ここで20%近くにもなっています。これは、2007年頃に日本で各会社が内部統制を構築する必要がでてきたことに伴い、内部統制監査に必要な人材を大幅に増やす必要があるのではないかといって意図的に合格者数を増やしたためです。

しかし、実際やってみたら、内部統制監査を導入したからといってそこまで追加の人材は必要じゃなかったんです。するとどうなるか?ほとんどの合格者は監査法人へ就職するのですが、監査法人は大量に発生した合格者を採用しきれなくなったのです。

これがいわゆる、会計士の就職難問題です。慌てた金融庁は、公認会計士試験の合格者数を再度減らしました。

 

 

公認会計士試験に合格しようと思えば、平均で3年から4年かかります。2010年に受験者がどっと増えたのは、2007年に合格率が高くなったことによって「俺も合格できる!」と考えて勉強を始めた人が多かったからです。しかし、合格した時には既に監査法人の門戸は非常に狭くなっている。そのため、2010年頃の就職状況は最悪でした。死ぬほど勉強したのに就職できないなって・・・もちろん人気はガタ落ち。2011年から軒並み受験者数が減ってしまいました。

 

するとどうか。今度は逆に人数が足りなくてしょうがなくなったのです。監査法人業界は完全な売り手市場。正直、まともな合格者なら90%以上の確率で監査法人へ就職できるようになってしまったのです。実際、最近リクルーターやっている先輩とかに話しを聞くと、受験生の方が立場が上なので、ものすごく偉そうな人とかもいたりするそうです。

受験者の母集団は減っているのに試験の合格者は一定に保たなければならないとなると、合格率も相対的に上昇し、優秀な人材が確保できなくなるのです。最近の会計不祥事で監査法人の品質が指摘されるようになると、余計優秀な人が公認会計士を志すってことはなくなってしまいますよね。これは監査業界の深刻な問題です。

 

 

・不正発見の意識が欠如している

監査業界に属している僕がこんなことを言うのはタブーですが、不正を発見しようとしている公認会計士は少ないのではないかと思います。

誤謬を発見するのには必死です。会計基準も熱心に勉強している人が多いし、会社が誤った処理をしていれば的確に指摘することができていると思います。でも、意図を伴わないミスばかりを必死に追いかけて、肝心な意図を伴う不正を発見することに注力できていない人が多いと思うのです。

 

 

今回の東芝の事件も、おかしいと思っているところはあったそうです。そこで会社の人に質問したとき、会社に説明されたことを鵜呑みにしてしまい、結果的にそこが粉飾につながっていたのです。納得感を得るまで徹底的に追及する姿勢が欠如していたとしかいいようがありません。

 

 

こうなってしまっているのには、2つの大きな原因があるように思います。

 

①1つ目は、監査の報酬体制です。監査法人は、監査を実施するクライアントから報酬を受け取っています。監査法人もしっかり経営しないとつぶれてしまうので、クライアントとの関係は大事にしなければいけません。しかし、不正を徹底的に追及するとなると、クライアントとの良好な関係を時には捨てざるをえないときがあります。これがなかなか難しいのです。だから、本当はこういう手続を実施したいけど、クライアントとのリレーションが悪くなるから実施できないとかいうことも起こりえたりしてしまうのです。

 

 

②2つ目は、やたらと増える細かいルールです。東芝の事件後、さらに監査体制が厳しくなり、今や数え切れないほどの細かいルールがあります。もちろん、それには従わなければならないため細かい手続をいっぱい実施するのですが、これが不正発見の意識を遠ざけてしまうのです。つまり、細かい手続に追われてしまい、不正を発見するために必要な全体的な財務分析等の肝心な手続に割く時間が減ってしまうのです。手続の仕組みや方法を理解するのももちろんめちゃくちゃ重要ですが、それだけにとらわれていたら監査をやっている意味なんて全くなくなってしまうのです。

 

とにかく、不正事例研修を増やす等して、不正発見の意識付けをもっと積極的に行っていかないと、監査の質は落ちる一方なのかなと思います。

 

 

 

・結論、公認会計士の質の低下は否めない

やはり、こう結論付けるしかないでしょう。どれだけ他の監査で不正を未然に防止できていたとしても、やっぱり会計不正が起きてしまっているのですから。言い訳はできません。もっと優秀な人材を集めることができるようにならないと、監査業界は悲惨になってしまうかもしれません。

 

 

公認会計士の質を高めるには?

このためには、とにかく優秀な人材を多く集めることが最優先です。そのために、もっと報酬を増やすべきだとは思います。正直言って、このレベルの給与水準では、優秀な人はなかなか公認会計士を勉強しようと思わないでしょう。そんな必死に勉強しなくても、外資系コンサルや外銀へ行った方が、たくさん給料をもらえるのですから。

 

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なので、給与水準をもう少しあげること、そして、それを実現するために今の安すぎる監査報酬の水準も上げることが必要です。日本の監査報酬の水準は、アメリカのそれと比して半分以下ですからね。本質的に、監査法人間で値下げ合戦するようなビジネスではないのです。

 

 

なんとまあネガティブな記事になりましたが、これが本音です。やっぱり自分も会計士として、世間からの信頼を失いつつある現実をちゃんと受け止め、どうやったらその信頼を取り戻すことができるかをちゃんと考えないといけないと思っています。

 

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。