会計士の気まぐれ日記

ビジネスに関する有益な情報をお届けします。たまにただ思ったことや感じたことを書きます。

東芝の不適切会計について

お久しぶりです。 


かなり更新が滞ってしまいました。 

繁忙期も無事?終わり、今は時間のある生活を過ごしています。 


久々の記事は、某企業の減資について書こうかと思ったのですが、独立性やらいろいろあるのでやめておきます。 


ってことで今日は、東芝の不適切会計処理について書いていきたいと思います。 


まず、東芝は昨日、過去のインフラ事業工事に関する会計処理が不適切であり、それにより、2012年3月期から2014年3月期までの累計営業損益を500億円強減額修正する見通しであることを発表しました。 



こんな風になった原因は、工事契約の会計処理の難しさに起因していると思います。 


東芝米国会計基準を採用しているため、それを前提に説明します。 


まず、大規模な工事が行われる際の会計処理の基本的な説明をします。 



たとえば、1000億円の工事原価が発生すると見込まれ、今後10年間かけて工事を実施し、完成後に1200億円を受け取る契約を当期に行ったとしましょう。 



この場合、会計処理はどうなるのでしょうか? 



契約を締結した当期に1200億円の収益と1000億円の売上原価を計上するのか? 
それとも、完成して相手に工事物件を引き渡してからその処理をするのか? 
それとも、工事の進捗に応じてちょっとずつ収益と費用を計上していくのか? 


基本的に、米国の会計基準では後者2つが認められています(日本基準においても同じ)。 



そして、工事契約の結果が適切に予測可能であるならば、3つ目の方法を採用しろということになっています。 


この3つ目の方法を工事進行基準といって、東芝もこれにしたがって会計処理しています。 



この基準の下では、基本的に 

①工事による売上高 
②工事原価 
③工事の進捗 

を適切に把握したうえで工事収益、工事原価が決定されています。 



そして、工事原価が工事収益を上回ると見込まれた時点で工事損失引当金を計上することになっています。 




今回の東芝の件に関しては、上記3つの測定(主に工事原価の過少計上と言われている)になんらかの誤りがあったということになります。 



この測定は非常に難しく、特にインフラ工事ともなると大規模かつ長期の工事が見込まれるため、測定の難しさはさらに増します。 



そのため、仕方ないといえば仕方のないことなのですが、、これだけの影響力のある企業が 

「測定が難しかったから、ミスっちゃいました。すいません。」 


で済まされるはずがありません。 


もっと専門家の配置などを通して工事原価を適切に見積もることができるようなシステムづくりをしておくべきだったのではないのでしょうか。 



それが難しいこと、追加のコストがかかることはわかりますが、このように事後的に判明することによって受けるダメージのほうが大きいのではないかとも思います(この件で東芝の株価は急落している)。 



まあでも、もっと懸念すべきなのは、この不適切な会計処理が意図的であったのかどうかということですね。 


仮に意図的であったのなら、この程度の話で済む問題ではないことになります。 



いずれにせよ、今後の東芝の決算発表が注目です・・・。