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会計士の気まぐれ日記

時事問題、自己啓発、会計、経済、金融、プライベート等に関する情報を配信しています。

完全に納得できるまで考える

最近、長時間労働を是正すべきという風潮がありますよね。

そんななか、私は普通に夜10時とかまでいたり土曜日出勤したりと、働き方改革に逆行するような勤務形態となっています。

これ、よくいうじゃないですか。「長時間労働をするのは、能率が悪いからだ。能率が悪い奴が多く働くなんて、残業泥棒だ」って。

 

 

わかります。この意見は非常によくわかります。

でも、ただ仕事を早く終わらせることになんの意味があるのかと。能率だけを重視して早く仕事を終わらせることができたら、「あいつは仕事が速い」と評価されるかもしれません。結果として残業時間が減っていたら、上の人間からは好かれるでしょう。

 

 

 

しかし、仕事をする上で「考える」という重要なプロセスを踏まずして、早く仕事を終わらせることは無意味に等しいと思うのです。

例えば、監査法人で勤めている人は、実施した手続の内容とその結果が記載された「監査調書」を作成します。特に入りたての新人は、ふられる分担が現預金等、クライアントの環境に大きな変化がない限り前期の調書を更新するだけで完成してしまうようなものが多いです。

 

 

ただ、ここで何も考えずに数字の更新だけして、「終わりました」なんて言っても、能力のない上司からは「仕事が速いね」と評価されるかもしれませんが、能力のある上司からは考えずに作っていることがバレバレとなります。

監査法人に入所して1年が経ち、もう2年目で後輩を抱えるようになりましたが、「考える」ってほんとに難しい。

 

 

「これで終わりにしても何も言われないだろうけど、まだ完全には腑に落ちていない。。でも、完全に腑に落ちるまでやったらあと数時間はかかるだろう。そうこうしているうちに、他の仕事をする時間がなくなっちゃう。。ま、これはもうここで終わりにしていっか」

 

 

この思考に陥らせる悪魔が常に自分の中に潜んでいるのです。

そして、その思考を繰り返してしまうと、本当に何もわからないままただ時間が過ぎることになってしまう。

僕の直属の上司に、鬼のように仕事ができる優秀な人がいるのですが、その人の口癖が、

 

「この手続、なんでやるか意味わかってる?数字をただ繋げるだけじゃなくて、分析しないと意味なくない?もっとよく考えて。」

 

 

少し納得感が足りないまま作った調書を作ると、面白いほどに上記のようなレビューがくるのです。

そのとき思ったのが、「自分が監査をやり続けている理由って何か?」ということ。

会社のビジネスの仕組みを見に行く機会が転がっていて、それがどういうふうに数字と連携しているのかを目の前で見ることができる。それを知ることで、誰かのためになるような情報を発信できるようになるために、監査してるんじゃないかと。

そう考えると、完全に納得感を得られるまでは考え抜く癖をつけないといけない、そんな目的全く達成できないと思うのです。それと、AIの台頭が話題になっている最近特に軽視されがちな知識。知識がないと、自分のバリューを相手に認めてもらうことは難しいです。

 

 

そう考えると、将来成功したいなら、定時には帰って飲みに行きたいなんて言ってる場合じゃないと思うんですね。普段の仕事をめちゃくちゃ考えながら遂行し、知識量も蓄える。普通に考えると帰る時間も遅くなってしまいますよね。

ワークライフバランスを優先するか、それとも自分の早期成長を優先するか。という問題だと思います。

まあ、特に何も意識せずただただ長時間勤務しているだけの人にはならないように気をつけないと。笑

 

 

 

今日も最後までお読み頂きありがとうございました。

 

東芝の減損の謎(続き)

以前、東芝の減損の謎 - 会計士の気まぐれ日記で取り上げた東芝の減損の件について今日はその後の進展のまとめ、及び今後東芝がどのような運命を辿るのかについて書こうと思います。

 

 

まず今回の件について、これまでの経緯を簡単にまとめてみます。

 

 

 

・2015年12月31日、東芝の子会社である米ウェスチングハウス(WEC)が、米CB&Iから米ストーンアンドシェブスター(S&W)を買収

・買収における取得価額配分作業について、1年間の猶予を設ける

・2017年に入って、S&Wの識別可能純資産が大幅なマイナスとなることが判明し、これにより約7,000億円規模ののれんの発生、当該のれんの減損が必要となることを発表

・2017年2月14日、当初予定していた四半期報告書の発表を1ヶ月間延期

 

 

 

識別可能資産が大幅なマイナスとなったということは、つまり、買収時の負債の公正価値が実は7,000億円以上 も存在したということです。企業結合時は、買収先の会社の資産と負債を基本的に全て時価等の公正価値で測定し、当該資産と負債の差額を識別可能純資産とします。そして株式取得時に、当該識別可能純資産よりも多く支払った分がのれんとなります。

一部の報道によると、今回のように負債の公正価値が当初よりもはるかに大きくなってしまったのは、CB&Iとの間で、識別可能純資産の測定中に生じた追加的な建設コストを、全てS&Wが負担する旨の契約書の文言が事後的に見つかったためと言われています。

 

 

S&W買収について、東芝本社側の幹部はほとんど関わっていなかったという情報から考えると、WEC幹部が当該契約書の文言を見落としたまま、買収に踏み切ってしまったことがそもそもの失敗にあるのだと思われます。

 

 

東芝を監査しているPWCあらた監査法人は、こんな急にで7,000億円規模の損失が生じてしまうような重要な契約書の文言を見落としていたと言われてしまったら、どう考えるでしょうか??

もちろん、「他にも損失を生じさせるような契約があるのではないか??」と思いますよね。

恐らくあらたの監査人は、今現地の弁護士とかも総出で契約書の内容を精査中であり、故に四半期報告書提出期日である2月14日までにレビュー意見を表明できず、東芝もやむなく決算発表を延期したのだと思われます。

PPA(取得原価配分作業)を完了させる期限である2016年12月期の決算を過ぎた後に識別可能純資産に誤りがあった場合、それは監査上は虚偽表示として識別されます。そのため、あらたとしてはここで「これ以上の減損が生じる余地はない」と確信できるレベルにもっていくまで、手続を実施しないといけないのです。多分、今東芝の監査チーム、特に一番上の業務執行社員は気が気でないでしょう。

 

 

では、東芝は今後どうなるのでしょうか?

すでに報道でも話があがっている通り、東芝は今回の減損によって、2017年3月期の決算で債務超過に陥ることを防ぐために、半導体モリー事業を分社化し、当該分社した会社を外部へ売却する可能性があります。メモリ事業の分社化自体は2017年3月31日をめどに実施する予定である旨をすでに公表しているため、あとはそのうちの何割くらいを外部に売却するか、もしくは売却しないのかが見所となります。

 

 

 

いずれにせよ、債務超過に陥った結果財務制限条項に陥って現状の借入金を即刻返済しなければならなくなった上に、銀行からの新規貸付が降りなくなるといった最悪のエースが起こってしまった場合は、東芝の資金繰りは一気に悪化し、倒産リスクが上がります。

下記のグラフは、過去のCF計算上の借り入れの額を、長期と短期で分けて集計したものです(単位は百万円)。見てのとおり2016年3月期における銀行からの借入金が、長期から短期にシフトしています。この傾向は、業績が悪化していて、銀行からの与信レベルが下がっている会社によく見られます。

 

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とはいえ、実は、仮に東芝のような会社で債務超過が解消できず、財務制限条項に引っかかったとしても、実務上銀行は急にこれまでの貸付額を全て返済するよう求めるわけではない可能性が高いのが事実です。また、このような日本を代表するような大企業に対して本当に全て即時返済を求めた結果東芝が倒産してしまうと、以下のようなことが起こりえます。

 

①路頭に迷う東芝の従業員の家族が増える

東芝に投資している投資家が多大な損失を被る

③今回のS&W における莫大な原発建設工事の追加コストを支払えず、日米間の関係を悪化させてしまう

 

 

上記が本当に起きてしまってはまずいのは自明の理でしょう。

仮に貸付先が全ての事業が悲惨な状態で、明らかに再起不能であるとなった場合は、たとえ日本を代表する大企業であったとしても銀行は貸付をストップします。

しかし、東芝では原子力以外のセグメントにおける事業はまだ全然悲惨な状態とはいえないでしょう。むしろ今回の原発の追加コストは、金額が莫大であるとはいえ、かなり突発的かつ一時的なものであることが想定されます。

そのため、銀行としても、短期ではあっても貸付を続けるのではないかと思います。また、現在の貸付金を即時返済しろといったことも言わないのじゃないかと思います。

 

 

 

そして、銀行としても国から色々裏で言われているのだと思います。

「あの会社を潰してアメリカの原子力関係の会社に7,000億円以上もの債務を返済できなくなると、そういうことに敏感そうなトランプ大統領の反感を買うことになりかねず、マズい。せっかく安倍さんが築き上げてきた米国との良好な関係を崩さないためにも、最大限に支援してやってくれ」

とか言われているんですかね。笑

 

 

まあこれはあくまで妄想ですが、いずれにせよ、東芝は潰れないのだと思います。というか、潰れないように第三者がなんとかする。東芝の昨年の不適切会計や今回の明らかな善管注意義務違反と比べたら全然罪が軽いホリエモンが完全にパブリックエネミー扱いされた一方で、東芝の役員は免責辞任するだけで許される。。。つくづく不条理な世の中です。

 

 

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

冨山和彦さんの講演

私のような会計士候補生は、実務補習所という場所へ3年間通って一定の単位を取得し、その後に修了考査という試験をパスして、晴れて公認会計士になることができるのです。

つまり、「会計士の気まぐれ日記」というタイトルを謳っているにもかかわらず、正確には私はまだ公認会計士ではないのです。笑

というわけで、その実務補習所へ行ってきました。今日の講義はなんと、僕が以前にも幾度が紹介させていただいた冨山和彦さんによる講演でした。

 

 

さすが、数々の修羅場をくぐり抜けて来られた経営のプロフェッショナルとあり、3時間の講義があっという間に終わりました。

今日は、備忘という意味も兼ねて、講演内容の一部を簡単に箇条書きで紹介させていただきます。

 

 

 

日本に顕著な課題(個別企業レベル)

・ゼネラリスト指向の人事制度では、プロフェッショナルは育ちにくい。

・これからの時代、ゼネラリストはAIの発達等により淘汰されていくため、欧米のようなJob Discription体制をとるべき。

・それぞれの業務で求められるレベルが、今は格段に上がっている。

・合議制が採られている中で最も重要なのは、CEOを誰にするか。そのため、ろくに検討もせずにそこらじゅうの人にオファーを出すようなふざけたことはしないで、優秀な30代〜40代等の人間に圧倒的な成長ができる道を与えて試行錯誤したりすることで、真面目に後継者を選出しなければならない。

・経営≒意思決定力×実行力。日本は実行力に長けているが、意思決定が下手くそ。意思決定の方向がずれていると、マイナスの影響はむしろ拡大してしまう。意思決定力でキーとなるのは、徹底的な「合理主義」であり、「情」に流されてはいけない。

 

 

日本に顕著な課題(産業レベル)

・産業横断的な低い人材流動性

・欧米ではプロフェッショナルの流動性が非常に高い。

・銀行でずっと勤務してきた人は製造業の社長が務まらないというのは嘘。経営みたいなプロフェッショナルな仕事は、自分の属してきた業種によって成果が決まるわけではなく、個人のバリューで決まる。そのため、経営をナメてきた人は、どれだけ業界に詳しくとも、会社を潰す。

・その会社でしか仕事ができない、「会社病」にかかっている人が多すぎる。

 

 

これから会計士に求められる能力

・チェックリストを埋めるような作業をしているだけの人と、数字の裏の背景を考えることができる人では、天と地の差がつくようになる。

・数字の裏にある実態を読み解くことができるようにならなければならない。例えば、ROEが10%を超えている部分だけを見て「この会社は優秀だ」と言い切っちゃうようなバカになってはいけない。その会社は、財務レバレッジが高いだけかもしれない。

財務会計の知識を有していることは、必要条件であるものの、十分条件ではない。管理会計、経営会計や、ファイナンスの知識も身につける必要がある。

・数字の裏の実態を読み解くことができるようになるために、普段から世の中の森羅万象に興味を持たなければならない。例えば、「なんでセブンイレブンは他のコンビニを凌駕しているのに、全国展開されていないのだろう?」とかを考える癖をつけると、意外と世の中が面白いことがわかるし、非常に仕事にも役立つ。

・古典や歴史のような教養を身につける意義は、結局は「人を観察する」ということ。様々なタイプの人に興味を持つことから、ビジネスへの興味を持つことも始まる。

・監査を行うときは、徹底的に冷徹な判断を下すことが大切。一つの監査契約を失っても君の仕事はなくならないが、逮捕されると全て失う。

 

 

 

とにかく、世の中へもっと興味を持てということを何度も繰り返していらっしゃいました。これこそが、プロフェッショナリズムを磨く上で一番基本かつ重要なことなのでしょうね。

同氏のおすすめの本も紹介されていたので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

会社は頭から腐る 企業再生の修羅場からの提言 (PHP文庫)

会社は頭から腐る 企業再生の修羅場からの提言 (PHP文庫)

 

 

 

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

 

 

 

後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)

後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)